「最後の一葉」(O.ヘンリー)

薦めるまでもなく、道徳授業で出会えます

「最後の一葉」(O.ヘンリー/小沼丹訳)
(「百年文庫021 命」)ポプラ社

「最後の一葉」(O.ヘンリー/芹澤恵訳)
(「1ドルの価値/賢者の贈り物 他21編」)

 光文社古典新訳文庫

「最後の一葉」(O.ヘンリー/小川高義訳)
(「O.ヘンリー傑作選Ⅱ」)新潮文庫

画家の卵・ジョンシイは
肺炎にかかり、
生きる気力を失う。
彼女は窓外の蔦の葉すべてが
風に舞い落ちたとき、
自分の命がつきるのだと
思い込む。
その夜、
嵐の訪れにもかかわらず、
最後の一枚は落ちることなく
壁に張り付いていた…。

「賢者の贈り物」と並ぶ、
あまりにも有名なO.ヘンリーの代表作。
私もこのお話が大好きで、
何度も読み返しては
感動に浸っています。

残った一枚の葉を見て、
ジョンシイは
生きる希望を見いだします。
それだけではなく、
「いつか、あたし、
ナポリ湾を描くつもりよ」と、
画家としての目標まで
しっかりと掲げるのです。

その残った一枚の葉は、
同じアパートに住む
老画家ベアマンが、
嵐の夜に壁に描いた「絵」であり、
本物と見まごうほどの
会心の作品だったのです。
売れないベアマンの
一世一代の最高傑作となりました。
しかし、そのベアマンは、
夜の冷たい雨に打たれ、
肺炎で帰らぬ人となります。

自堕落な生活を送って
歳をとっていった老ベアマンが、
自らの命をかけて
若い画家の魂を救う。
まさに、命のバトンタッチです。
連綿と繋がっていく生命の尊厳が
そこに現れていると思うのです。

さて、
あまりにも感動できる本作品、
命の大切さを考えさせる題材として、
以前から道徳の教材として
使われています。
私も何度か
授業で取り上げたのですが、
最近は躊躇しています。

子どもたちの目線が
ジョンシイへ注がれている分には
問題ありません。
生きることの大切さに気付いた
彼女への共感の気持ちを
高めてあげればいいのです。
しかし、子どもたちが
ベアマンの行動に着目すると、
困ったことが起こります。
子どもたちの意識が、
誰かのために犠牲になる
崇高さの方へ傾いてしまうのです。
命の大切さを説こうとして、
逆に命を犠牲にすることを
認めるような流れに
なってしまいかねない、
注意が必要な作品なのです。

命の問題は複雑です。
だからこそ道徳の授業でも
いろいろな角度から
子どもたちに考えさせる
必要があるのです。

私が薦めるまでもなく、
道徳授業で出会えるであろう、
O.ヘンリーの有名傑作短編です。

(2019.3.29)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA