「このあとどうしちゃおう」(ヨシタケシンスケ)

ごく自然な目線で「生と死」を見つめることができる

「このあとどうしちゃおう」
(ヨシタケシンスケ)ブロンズ新社

亡くなったおじいちゃんの
部屋を掃除していたら、
ベッドの下からノートが出てきた。
「このあとどうしちゃおう」と
書かれたノートには、
「自分が死んだら
どうしてほしいか」が
いっぱい書いてあった…。

またまた勤務校の図書館で
すてきな一冊を見つけてしまいました。
おじいちゃんが死後の世界について
楽しい空想を働かせています。

「このあとのよてい」では、
「ゆうれいセンター」「てんごく」
「うまれかわりセンター」での
過ごし方を通して、
生まれ変わるまでの生き方(?)を
俯瞰しています。

「てんごくって
きっとこんなところ」では、
「おばあちゃんがいる」
「とにかくおさしみがおいしい」
「あちこちに
ふとんとおんせんがある」など、
天国を思いきり美しいところとして
描いているのがチャーミングです。

「いじわるなアイツは
きっとこんなじごくにいく」では、
「なにをしてもおこられる」
「とにかくくさい」
「たんじょうびの
プレゼントがちゅうしゃ」といように、
地獄の大変さを描くことも
忘れていません。

「みんなをみまもっていくほうほう」では、
「つきになって」
「かさぶたになって」
「かぜでクルクルまわる
ビニールブクロになって」、
残した孫を見守る
優しいおじいちゃんの視線が
感じられます。

ついつい微笑んでしまいます。
でも、こうしたユニークな内容の
羅列で終わっていれば、
ここに取り上げなかったでしょう。
本作品は見開きで16ページ。
その10ページ目から
雰囲気が変わります。
おじいちゃんのノートを
見ていた「ぼく」は
ふと気が付くのです。
「おじいちゃんは しぬのが
 たのしみだったんだろうか?」
「もしかしたらぎゃくかもしれない」

このあと、
死ぬ前のおじいちゃんの気持ちを
一生懸命考えようとする「ぼく」、
お父さんに相談する「ぼく」、
自分も
「このあとどうしちゃおう」ノートを
つくろうと決心する「ぼく」、
そしてそれを考えた結果、
今生きているうちに
やりたいことがいっぱいあることに
気付く「ぼく」が描かれていきます。

そうです。
本書は単なる空想遊びではなく、
「生と死」を考える絵本なのです。
「死」に対して
深刻な思いを抱かせるのではなく、
子どものごく自然な目線で
「生と死」を見つめることができる、
優れた内容を持つ一冊です。
こうした本こそ、
小学校中学校の図書室にあるべきです。

※2016年に出版された本書、
 だいぶ話題になっていたようですが、
 私は知りませんでした。

(2019.6.22)

karamelによるPixabayからの画像

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