「古生物たちのふしぎな世界」(土屋健)

不可思議なカタチをした生きものだらけです

「古生物たちのふしぎな世界」
(土屋健)講談社ブルーバックス

古生代という時代は、
実にダイナミックであり、
ドラマチックです。
この時代には
生態系の覇権をめぐる
動物たちの栄枯盛衰が
とても激しく
繰り広げられていたからです。
恐竜に相当するような
圧倒的な強者が
存在しないのです。…。

地球史を古生物によって
「新生代」「中生代」「古生代」
「先カンブリア時代」の
4つに区分したものを
「地質時代」といいます。
本書は「古生代」に
進化発展した生物群を取り上げ、
古生代3億年の歴史を
紹介したものなのです。

「先カンブリア時代」に
生息していた生物は
いわゆる微生物のみだったと
考えられています。
「古生代」は、
生物が肉眼で見える大きさまで
体を大きくし、
さまざまな形態に
進化と絶滅を繰り返した、
生物の外観デザインの
試行錯誤期ともいえる
興味深い時代なのです
(なお次の「中生代」は恐竜の時代です)。

【本書の章立て一覧】
はじめに
地質年代
プロローグ-前夜-
第1章 勃興
第2章 節足動物と軟体動物の支配
第3章 革命
第4章 祖先たちの王国
エピローグ
参考資料・索引
※くわしくはこちらから(講談社HP)
※YouTubeに
 素敵なPR動画がありました。

不可思議なカタチをした
生きものだらけです。
なんといっても
古生代の支配者アノマロカリス。
こんなにもいろいろな
バリエーションがあったとは。
五つ目でエイリアンのような
口を持ったオパビニア。
宇宙生物としてSFに登場させても
通用するようなマルレラ。
ページをめくって眺めるだけでも
十分に楽しめます。

一応私も理科教師ですので、
最新の知見を得ることを目的に
読みました。
私の知らなかったことが、
やはりいろいろありました。

新しい知見①
眼をもつことが進化を促した

「眼をもった動物が
あらわれた」ことにより、
加速度的に弱肉強食の連鎖が始まり、
さまざまな攻撃手段・防御段を
獲得したものが出現し、
多様性が高くなる。
光スイッチ説だそうです。

新しい知見②
ハルキゲニアの完全復元図

これまでハルキゲニアという生物は、
その奇怪なカタチゆえ、
どちらが脚でどちらが棘なのか
判然としないという
旧来の説しか知らなかったのですが、
完全な復元図が掲載されていました。

新しい知見③
ピカイアは人類の遠い祖先ではない

ピカイアというのっぺりした生物が
人類を含む脊椎動物の祖先であると
認識していましたが、
ミロクンミンギアや
ハイコウイクチスが発見され、
これこそが人類につながる
祖先であることが確定したそうです。
2つの古生物の発見は1999年。
知りませんでした。

新しい知見④
哺乳類の祖先は爬虫類ではない

これまで何の疑問も持たずに
「爬虫類から哺乳類の仲間がうまれた」と
授業で説明してきました。
それはもはや古いのだとか。
爬虫類と哺乳類は直接繋がっていない。
これも知りませんでした。

勉強になりました。
科学は日々進歩しているのです。
これまでの古生代史の
概念を新たにする一冊です。
科学好きのあなたに、そして
科学の嫌いなあなたにもお薦めです。 

(2019.6.29)

〔追記〕
〔土屋健氏の著作について〕
本書の著者・土屋健氏は
「リアルサイズ古生物図鑑」という
素敵な図鑑も著しています。
「古生代編」「中生代編」「新生代編」と
三部作です。
本書を「古生代編」と比較して読むと、
より立体的に古生物の世界を
捉えることができるはずです。

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さらに、本書を
パワーアップしたような一冊も
登場しています。

(2022.9.25)

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