「ピラミッドの謎」(吉村作治)

ピラミッド建造は巨大公共事業だった!?

「ピラミッドの謎」
(吉村作治)岩波ジュニア新書

世界七不思議の一つである
ピラミッド。
日本では世界の史跡の一つというよりも
「ファラオの呪い」
「ピラミッド・パワー」などの
超常現象の方ばかり
取り上げられてきたように
思うのですが、
しっかりとした学術調査を
行っている日本人による本が
しっかりと出版されていました。
それが本書です。

「1 ミイラ発見」
著者による未盗掘完全ミイラ
「セヌウ」発見譚とそれにまつわる
謎について書かれています。
多くの王墓が過去5000年間に
盗掘に遭い、
完全な状態でのミイラは
少ないということで、
2005年のこの発見は
非常に貴重なものなのだそうです。

「2 ミイラはなぜ作られたのか」
古代エジプトの王族たちが
こぞってミイラという形で
埋葬されることを望んだ理由や、
死体をミイラにするための具体的な
手順について説明されています。
オカルトとして扱われることの多い
ミイラなのですが、
実際には見事な職人芸であることが
わかります。

「3 ツタンカーメンの謎」
黄金のマスクで有名なツタンカーメン。
その発掘に携わった
イギリスの考古学者カーターの
苦労と執念を綴っています。
また、ツタンカーメンとは
どのような人物だったのか、
歴史を紐解いています。

「4 ピラミッドはなぜ作られたのか」
ここが最大の読みどころでしょう。
著者は「ピラミッドは王墓である」という
定説に疑問を投げかけます。
そして「ピラミッド建造は
巨大公共事業であった」
という論を
展開しているのです。
目から鱗です。
さらに研究が進み、
いつか教科書が書き換えられる日が
来るかも知れません。

「5 ピラミッド建造法の謎を解く」
どうやって巨石を積み上げたのか?
ピラミッド建造の謎対し、
著者は実際に行ってみることで
その謎を解明しています。

「6 古代エジプト三大美女の謎」
ネフェルティティ、
ネフェルタリ、
クレオパトラという
エジプト三大美女の生き様について
取り上げています。
歴史の舞台にはやはり女性の存在が
大きく関わっていたのです。

学術的な難しいことや
系統的な歴史論には深く踏み込まず、
一般人が興味のある部分に
焦点を当てて解説しています。
これなら中学校1年生でも
興味を持つことができ、
十分に理解できると思われます。
中学生に薦めたい一冊です。

著者は現在もエジプトで奮闘中です。
クラウドファンディングで資金を集め、
「太陽の船」の復原と
ピラミッド王墓説を覆すことに
全精力を傾けています。
近い将来、ピラミッドの謎が
すべて解き明かされ、
この本の続編もしくは増補版が
出版される日が来ることを
楽しみに待ちたいと思います。

(2019.7.30)

StockSnapによるPixabayからの画像

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