多感な中学校2年生を描いた「生徒文学」
「市立第二中学校2年C組」
(椰月美智子)講談社文庫
![](https://www.xn--u9jxf6af7c4b7e3b2kra6gh4851yok3b.club/wp-content/uploads/2019/09/2019.09.12-2.jpg)
8時09分、
瑞希は決まらない髪形に悩み、
10時24分、
貴大は里中さんを好きになる。
12時46分、
グループ分けで内海があぶれ、
12時59分、
みちるは嫌いな人に
イヤといえないでいる。
そして18時58分、
慎吾は帰宅して風呂に入る…。
以前、椰月美智子の
「十二歳」を取り上げ、
「中学生向けの本が少ない、
いわゆる児童文学が」ということを
書きました。よく考えると
言葉の使い方が不適切でした。
「児童」とは小学生を指します。
中学生は「生徒」です。
したがって、
中学生が読むべき作品は
「生徒文学」というカテゴリーで
くくられるべきなのです
(かなり無理がありますが)。
実際、小学生が読むべき作品と
中学生が読むべき文学には
大きな隔たりがあると思うのです。
ではどんな作品が「生徒文学」か?
その一つと考えられるのが本書です。
構成が絶妙です。
全37章が生徒一人一人の目線で
書かれているのです
(生徒36人+担任1人)。
描かれているのは
10月19日月曜日ただ1日だけ。
しかも時間順です。
第1章「6時47分川口麻衣」から始まって
第37章「18時58分井上慎吾」まで。
その独特の作品構造によって、
生徒一人一人が
生き生きと描かれています。
まるで生徒たちの
実際の息づかいまで
感じとれるかのようです。
また、何気ない日常を
切り取ることにより、
同世代の中学生は共感できる部分が
大きいのではないかと思います。
そして、登場人物(2年C組の生徒)の
誰かと、自分もしくは周囲の友達を
重ね合わせてしまうのでは
ないでしょうか。
「あっ、これって自分かな?」
「この子、○○ちゃんそっくり!」と。
惜しまれるのは、
なぜか2名だけ描かれていないことです。
脚光を浴びない生徒がいるのは
残念です。
とくに金子さんの視点は絶対必要です。
金子さんが
悪者で終わってしまっています。
金子さんには金子さんなりの
立場と考え方があるはずです。
さらに、いかにも平凡な1日として
描かれていますが、
実際には事件だらけです。
いじめはもちろん、保健室登校、
自傷行為、無断早退、喫煙、
授業妨害的行為、部活動のサボり等々、
私の住む地域では
一つ一つが大きな問題であり、
これらが一日の中で
同時多発的に発生しているのであれば、
かなり「荒れている学校」ということに
なります。まあ、だからこそ
小説の世界なのですが。
それを差し引いても、
子どもたちが自分と向き合うためには
こんな「生徒文学」が
いいのではないかと考えます。
登場人物の誰かを
共感できるのであれば、
読む価値があるというものです。
多感な中学校2年生を描いた秀作として、
子どもたちに紹介したいと思います。
(2019.9.12)
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