「市立第二中学校2年C組」(椰月美智子)

多感な中学校2年生を描いた「生徒文学」

「市立第二中学校2年C組」
(椰月美智子)講談社文庫

8時09分、
瑞希は決まらない髪形に悩み、
10時24分、
貴大は里中さんを好きになる。
12時46分、
グループ分けで内海があぶれ、
12時59分、
みちるは嫌いな人に
イヤといえないでいる。
そして18時58分、
慎吾は帰宅して風呂に入る…。

以前、椰月美智子
「十二歳」を取り上げ、
「中学生向けの本が少ない、
いわゆる児童文学が」ということを
書きました。よく考えると
言葉の使い方が不適切でした。
「児童」とは小学生を指します。
中学生は「生徒」です。
したがって、
中学生が読むべき作品は
「生徒文学」というカテゴリーで
くくられるべきなのです
(かなり無理がありますが)。
実際、小学生が読むべき作品と
中学生が読むべき文学には
大きな隔たりがあると思うのです。
ではどんな作品が「生徒文学」か?
その一つと考えられるのが本書です。

構成が絶妙です。
全37章が生徒一人一人の目線で
書かれているのです
(生徒36人+担任1人)。
描かれているのは
10月19日月曜日ただ1日だけ。
しかも時間順です。
第1章「6時47分川口麻衣」から始まって
第37章「18時58分井上慎吾」まで。
その独特の作品構造によって、
生徒一人一人が
生き生きと描かれています。
まるで生徒たちの
実際の息づかいまで
感じとれるかのようです。

また、何気ない日常を
切り取ることにより、
同世代の中学生は共感できる部分が
大きいのではないかと思います。
そして、登場人物(2年C組の生徒)の
誰かと、自分もしくは周囲の友達を
重ね合わせてしまうのでは
ないでしょうか。
「あっ、これって自分かな?」
「この子、○○ちゃんそっくり!」と。

惜しまれるのは、
なぜか2名だけ描かれていないことです。
脚光を浴びない生徒がいるのは
残念です。
とくに金子さんの視点は絶対必要です。
金子さんが
悪者で終わってしまっています。
金子さんには金子さんなりの
立場と考え方があるはずです。

さらに、いかにも平凡な1日として
描かれていますが、
実際には事件だらけです。
いじめはもちろん、保健室登校、
自傷行為、無断早退、喫煙、
授業妨害的行為、部活動のサボり等々、
私の住む地域では
一つ一つが大きな問題であり、
これらが一日の中で
同時多発的に発生しているのであれば、
かなり「荒れている学校」ということに
なります。まあ、だからこそ
小説の世界なのですが。

それを差し引いても、
子どもたちが自分と向き合うためには
こんな「生徒文学」が
いいのではないかと考えます。
登場人物の誰かを
共感できるのであれば、
読む価値があるというものです。
多感な中学校2年生を描いた秀作として、
子どもたちに紹介したいと思います。

(2019.9.12)

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