「7’s blood」(瀬尾まいこ)

つい「二人を見守る目線」になってしまう

「7’s blood」(瀬尾まいこ)
(「卵の緒」)新潮文庫

高校生の七子と
小学生の七生は異母姉弟。
七生は亡くなった父親の
愛人の子で、1ヵ月前から
一緒に暮らし始めている。
ところがすぐに母親が入院し、
二人だけの生活が始まった。
ぎくしゃくしながらも、
繋がりをつくっていく二人…。

そんなによくできた
小学校6年生、いるの?と
一人で突っ込みを入れた1時間後、
ラストの別れのシーンで
泣いてしまいました。
「50を越えたおじさんが読むような
小説じゃないだろう」と
白い目で見られようとも、
私はこういう作品が大好きです。

以前取り上げた「卵の緒」
並録されている作品です。
「卵の緒」同様、
ちょっと特殊な家族を描いています。
あり得ない設定なのに、
なぜか感情移入してしまいます。

それまで面識のなかった異母姉弟が
二人暮らしをしていく。
あり得ない設定です。
高校3年生の姉が
不器用でやや鈍感なのに対し、
小学校6年生の弟が
繊細で気が利いている。
これも普通ではありません。
そんな二人だから、
読んでいて危なっかしくて
ハラハラさせられてしまうのです。
夜中に腐ったバースデーケーキを
二人で食べる場面、
パジャマのまま
夜の町を二人で「旅行」する場面、
別れることが決まり
お互いに髪を切り合う場面。
一つ一つが哀しくも、
不思議に温かいのです。

つい自分の感覚が、
「二人を見守る目線」に
なっていることに気付きます。
まるで自分が二人の父親として
天国から見守っているような
錯覚に陥るのです。
だから心の底から笑えるのです。
そして、
だから心の底から泣けてくるのです。

七子の母親が七生を引き取ったのは、
自分の死期を悟り、七子を一人に
したくなかったからでした。
七子はそれに気付きます。
それが七子の大きな成長なのです。
成長できたからこそ、
次の別れも受け入れられるのです。

「未来もこの次もない。
 だけど、私たちには
 わずかな記憶と
 確かな繋がりがある。」

作者は物語をこう結んでいます。

家族って何だろう、
血の繋がりって何だろう、と
考えさせられる作品です。
「卵の緒」とともに、
中学生に薦めたい一冊です。

※この作品は
 性的な内容を含んだ会話が
 わずかに登場しますが、
 気になるほどではありません。

(2019.12.17)

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