「天気ハカセになろう」(木村龍治)

日々変化する天気は、毎日の献立

「天気ハカセになろう」(木村龍治)
 岩波ジュニア新書

一昨年猛威を振るった台風21号、
そして西日本豪雨、
さらには昨年の台風19号と、
近年気象災害が続いています。
そうしたニュースに接して
いつも思うのは、災害の大きさと
避難の警告ばかりが強調され、
それらのメカニズムについては
なかなか解説されていないと
いうことです。

台風や集中豪雨の
発生原理が分からない、けれども
大きな脅威であることは分かる。
これでは北から飛来するミサイルや
空想特撮上の大怪獣と一緒です。
おぼろげであっても
実体が見えてくれば、
防災と避難の正しい認識が
広がると思うのです。

本書もそうした疑念から
スタートしたものと思われます。
一般の読者、しかも中高生を対象に、
複雑な気象のメカニズムを
噛み砕いて説明した、
気象の入門書なのです。

筆者は、日々変化する天気を、
毎日の献立にたとえています。
天空に姿の見えない
「天気シェフ」がいて、
地上の私たちは
毎日その「天気シェフ」の
お任せ献立を食べている。
言われてみればその通りの喩えです。

それ故に筆者は、
「天気シェフ」の出した
「料理」=「気象現象」から、
そのもととなる
「材料」と「調理法」を解説し、
「気象現象」のしくみを
明らかにしているのです。
「材料」は光・水・空気、
「調理法」は地球の重力と自転、
それらの組み合わせによって
決まるのだと解説しています。

章立ては以下の通りです。
①空気
②大気圏
③対流圏
④雷雲
⑤竜巻
⑥集中豪雨
⑦台風
⑧高低気圧

さて、専門的な事柄を、
噛み砕いて説明してはいるのですが、
一般の方が読むと、
やや難しいと感じるのではないかと
思われます。
少なくとも中学校2年生で学習する
「天気の変化」を、
教科書をもう一度引っ張り出して
「復習」してからでないと
わかりにくいはずです。
この分野についてはまだまだ
一般向けの入門書が
未開拓の分野なのかもしれません。

それでも災害列島・日本で
生きる私たちにとっては、
「台風・集中豪雨」
「地震・津波」「火山」についての知識を
体系的に得ておくことは
必要不可欠だと思うのです。
姿の見えない脅威に
怯えているのではなく、
災害の実態を直視し、防災・減災に努め、
自分の命をしっかりと守り抜くために。

(2020.4.13)

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