中学校3年生に薦めたい本100冊vol.9 12月

第3学年12月 人間とは何か?

読書の醍醐味は、
現実では味わうことのできない状況を
体験できることです。
特に、特殊な人間の登場する世界を
堪能できることは貴重です。
この8冊には、現実世界では
なかなかお目にかかることのできない
人間が登場します。
そこから「人間とは何か?」を
子どもたちに考えてほしいと
思うのです。

その1
「変身」(カフカ)

家族の稼ぎ頭・長男グレーゴルは
ある朝目覚めると、
一匹の毒虫に「変身」していた。
彼の意識は
はっきりしているものの、
言葉を話せず、
意思の疎通が不可能となる。
困惑する家族は、
しかし力を合わせ、
毒虫の処分を模索する…。

その2
「ねじの回転」(H.ジェイムズ)

「自分自身で
すべての問題を処理し、
依頼主を絶対に煩わせない」という
不思議な条件の下に、
ある幼い兄弟の
家庭教師を引き受けた「わたし」。
しかしある夜
「わたし」が見たのは、
兄妹を悪の世界に
引き込もうとする
亡霊の姿だった…。

その3:
「異邦人」(カミュ)

アルジェの場末町に住む
青年・ムルソーは、
母の死に際しても
一切の感情を示さなかった。
その葬儀の翌日、彼は
旧知の女性と情事にふけるなど、
普段と変わらぬ生活を送る。
ある日、彼は
友人のトラブルに巻き込まれ、
殺人を犯す…。

その4
「悲しみよこんにちは」(サガン)

18歳のセシルは父・レイモンと
その愛人・エルザとともに
避暑地の別荘で
夏を過ごしていた。
そこへ亡き母の友人・アンヌが
やってくることになり、
一波乱起きそうな予感を
セシルは感じる。
セシルは近くの大学生・シリルと
恋仲になる…。

その5
「青春の蹉跌」(石川達三)

家庭が貧しく、
伯父から学費を貰っている
大学生・江藤賢一郎。
彼は司法試験に合格し、
伯父の娘・康子との結婚も決まり、
将来を約束される。
しかし彼には
登美子という愛人がいた。
登美子から妊娠を
打ち明けられた彼は…。

その6
「海と毒薬」(遠藤周作)

戦争末期のF市大学病院。
その医局では橋本・権藤両教授が
権力を争っていた。
前部長の姪の手術に
失敗した橋本は、
名誉挽回のために軍部と接近、
米兵捕虜の
生体解剖を引き受ける。
研究生の勝呂と戸田にも
参加せよとの声がかかる…。

その7
「人間そっくり」(安部公房)

ラジオ番組「こんにちは火星人」の
脚本家「ぼく」の家に、
火星人と名乗る男がやって来る。
男は火星の土地の斡旋や、
小説の執筆の勧誘を
次々にしていく。
変転する男の弁舌に振り回され、
「ぼく」は自分の存在に
自身が持てなくなる…。

その8
「金閣寺」(三島由紀夫)

幼少の頃から
吃音に悩まされていた「私」は、
父からよく話を聞いていた
金閣こそ
地上の最上の美であるという
幻想を抱きはじめる。
父の死後、
金閣寺の徒弟となった「私」は、
己の身の孤独と
金閣の美の魔力に
囚われていく…。

テーマがテーマだけに、
重い作品ばかりです。
読むのに難渋することでしょう。
よく理解できないかも知れません。
しかし、読書を進めていく上で、
避けては通ることのできない
テーマです。
今読んで理解できなくとも、
大人になって再読したとき、
少しずつわかることがあります。
私がそうでしたから。
読み始める年齢が早いほど、
後日読み返したときに
得るものが大きいのです。
中学3年生に強く薦めたい8冊です。

(2020.10.11)

JULIO VICENTEによるPixabayからの画像

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