「三つの寶」(芥川龍之介)

本とは、五感すべてで味わうべきもの

「三つの寶」(芥川龍之介)ほるぷ出版

犬の白は、友達の犬の黒が
犬殺しに襲われるのを
目撃するが、
怖さのあまり逃げ帰る。
すると不思議なことに白の身体は
真っ黒になってしまう。
飼い主のもとを去り、
流浪していた白は、
助けを求める犬の鳴き声に、
勇気をふるい…。
「白」

「本」とは、そこに書かれてある
テキストだけでなく、
表紙や装幀、挿絵や紙質まで含めて、
五感すべてで味わうべきものだと
考えています。
できればハードカバーのきちんとした
装丁の本を買いたいのです。

地獄を覗き見た釈迦は、
罪人の中にカンダタを見つける。
カンダタは悪党であったが、
過去に一度だけ善行らしきことを
成したことがあった。
小さな蜘蛛を
踏み殺しかけて止め、
命を助けたことである。
それを思い出した釈迦は…。
「蜘蛛の糸」

しかしそれでは
購入できる本の範囲が狭まり、
本との出会いが
少なくなってしまいます。
また、収納スペースの問題もあり、
私の書斎は現在、
本とCDとで収納限界まできています。
そのため、本はできれば文庫本、
しかも中古で購入しています。

「私」はある雨の夜、
魔術師として高名な友人
マティラム・ミスラ君に
会いに行く。ミスラ君は
「魔術は欲のある人間には
使えない」と前置きをし、
「私」に魔術を教える。
数ヶ月後、
「私」は教えられた魔術を、
他の友人たちに披露する…。
「魔術」

でも、本書のような本は、
ハードカバーで買ってしまいます。
というか、それしかないのですから。
芥川が昭和3年に出版した
童話集である本書は、
まさに五感すべてで
味わうべき本なのです。
収録されている作品は
これまで数回にわたって
取り上げたのですがが、
そのまとめをしてみました。

洛陽の西門の下で
三度不思議な老人と
まみえた杜子春。彼は
財力があるときは
ちほやするものの、
一文無しになれば
手のひらを返す人々に
愛想を尽かしていた。
彼はその老人を仙人と見抜き、
自らも人を捨て
仙人となることを望む…。
「杜子春」

「絵本」「児童書」という観点では、
現在では多くの優れた書籍がある以上、
もはや本書に
存在価値はないのでしょう。
しかし、かつて日本では、
文壇の著名作家が子どもたちのために
作品集を編んでいたという事実は
決して無視できないと思うのです。

上海のある町のインド人老婆は、
一人の少女を霊媒として
アグニの神を降臨させ、
占いで儲けていた。
その少女は香港領事の娘で、
誘拐された妙子であり、
日本人・遠藤が探していた
少女であった。
遠藤は老婆の家に
踏み込むものの…。
「アグニの神」

現代はどうか?
純文学作家がこうした童話を
書こうとしないことに問題があるのか、
売れないものに手を出そうとしない
出版社に問題があるのか、
こうしたものに関心を示さない
読み手側に問題があるのか、
詳しいことは分かりませんが、
何とも淋しい時代と言えます。

王子が三人の盗人と交換して
手に入れたのは、
「姿を消せるマント」
「鉄でも切れる剣」
「千里を一飛びできる長靴」
だったが、
すべて偽物であった。
王子は、その地の姫が
黒人の王に無理矢理
嫁がされようとしている
噂を聞き、王に挑む…。
「三つの寶」

再度述べます。
「本」とは、そこに書かれてある
テキストだけでなく、
表紙や装幀、挿絵や紙質まで含めて、
五感すべてで味わうべきものだと
私は考えています。

(2021.6.21)

PublicDomainPicturesによるPixabayからの画像

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【青空文庫】
「白」(芥川龍之介)
「蜘蛛の糸」(芥川龍之介)
「魔術」(芥川龍之介)
「杜子春」(芥川龍之介)
「アグニの神」(芥川龍之介)
「三つの寶」(芥川龍之介)

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