「AIの時代を生きる」(美馬のゆり)

AI時代を迎えるための「学び」はどうあるべきか

「AIの時代を生きる」(美馬のゆり)
 岩波ジュニア新書

「AIの時代を生きる」岩波ジュニア新書

私たちの暮らしの中に、
AIの存在感は
増してくる一方です。
本書では、
AIとは何かを理解した上で、
AIの時代に生きていくこと、
そしてよりよい社会を
私たちはどのように
実現していくべきかを、
一緒に考えていきたいと
思います…。
「はじめに」より

「日本の労働人口の49%が
就いている職業において、
人工知能やロボット等で
代替可能になる」という
オックスフォード大学と野村総研の
試算(2015年)は衝撃的でした。
まさにAIの時代が到来するのだという
実感を持った記憶があります。
「今を生きる子どもたちは、AI時代を
生きる大人たち」であるということを、
私は最近、強く意識して
授業づくりをするようになりました。

そのような中で昨年末に出会った
(というよりも、
著者・美馬のゆり先生から
直接お薦めいただいた)のが本書です。
AI時代を迎えるための「学び」は
どうあるべきか、示唆に富む内容に
満ち溢れていました。

「1章 AIの時代がやってきた」
「2章 AIってなに?」

ここではAIによって
変わってゆく社会を、
多様な切り口から
具体的に提示しています。
「ロボットキッチン」や「東ロボくん」の
事例が挙げられていて、
中高生でも十分に理解できる
工夫がなされています。

「3章 人間とAI」
「4章 「共感」とAI」

ここでは変化する社会での
「AIの役割」と
「人間にしかできないこと」を
明らかにしています。
「AIがバラ色の未来を創る」といった
楽観論ではなく、
「AIが人間の仕事を奪う」といった
危機感の誘起でもなく、
AIの浸透した未来を冷静に分析し、
そこで必要とされる人間の力について
述べています。
「AIは、他者の立場に身を置き、
相手を理解して問題解決することは
不得意」であり、
そのために発揮されるべきは
人間の「共感力」なのだと
著者は説いています。

「AIにはできなくて
人間にできること」について述べられた
文章や記事はいくつか見てきましたが、
今ひとつぴんとこないものが
多かったと感じています。
モヤモヤしていたものが
あったのですが、
「共感力」というキーワードを得て、
自分の考えもすっきりしてきました。

「5章 何を学ぶか、どうやって学ぶか」
その「共感力」を手がかりに、
中高生が学ぶべき力・
身につけるべき能力について
解説されています。
「共感力」に裏打ちされた「創造力」が、
2つめのキーワードとして
浮かび上がります。

この章については、
中高生よりむしろ教員にこそ必要な
知見が数多く盛り込まれています。
「自己調整学習」や「有能さの気づき」、
「デザイン思考」、
「プロジェクト型学習」、
「課題解決における
創造性と共感性」など、
教員の研修の視点を与えられたように
感じました。

「6章 よりよい未来を
     デザインするために」

そしてAIを含めて、
子どもたちがこれから迎える
新しい社会をよりよいものにしていく
視点が提示されます。
「未来を考える二〇の問い」は、
まさに子どもも大人も
等しく考えていくべき
「未来への宿題」だと思います。

読み終えて、心の中にエネルギーを
充填されたような気分です。
次の未来に向けて、この2022年が
明るく希望に満ちたものになるような
予感が芽生えました。
美馬のゆり先生、
ありがとうございました。

(2022.1.3)

Gerd AltmannによるPixabayからの画像

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