「花のささやき」(ジョルジュ・サンド)

子どもの心に戻って純真に物語を受け止めるべき

「花のささやき」
(ジョルジュ・サンド/小椋順子訳)
(「百年文庫018 森」)ポプラ社

花が雑然と
おしゃべりをしているのを
私は聞いたことがあります。
私はその言葉を
聞きわけられませんでした。
花々に私の影が見えないように
木の陰の下に身を低くして、
やっと一語一語言葉を
理解できました。
ヒナゲシの言葉を…。

ヒナゲシをはじめとする
花壇の草花たちは何を語っていたのか?
口々にバラ批判を行っていたのです。
「私」は花壇の花たちに失望し、
野原に咲いているバラの話を
聞きに出かけるのです。
そこで耳にしたのは、
花たちにせがまれて風が語る物語です。
風は、自身とバラとの関わり、
そしてなぜバラが美しく気高いかを、
静かに語り始めます。

本作品は、
晩年のジョルジュ・サンドの、
二人の孫娘のために書いた童話集
「祖母の物語」に収録されている
一篇であり、
あたかも優しいおばあちゃんが
就寝前の孫娘に
語り聞かせているような作品です。
素敵な童話なのですが、
五十を超えた私にとってはいくつかの
疑問符のつく作品でもあります。

今日のオススメ!

一つはなぜ
「バラ」なのかということです。
子どもに語って聞かせるとすれば、
「バラ」のような
いかにも高貴な花ではなく、
例えば「スミレ」のように
野に咲く小さな花を取り上げ、
それが「バラ」と同じくらい
誇らしい存在であることを教え諭すのが
年長者の在り方に思えるのです。
「スミレ」や「ヒナゲシ」が
意地悪な存在として登場し、
「バラ」が救い上げられる構造がどうも
ストンと胸に落ちてこないのです。

もう一つは「風」の生い立ちの設定です。
こちらも「破壊神の息子」という
格式の高い存在となっています。
父親の命令に背き、
すべての力を奪われて
地上に堕とされたのですが、
「風」となり、
「バラ」の恋人となったのです。
破壊者が創造の喜びに目覚めただけで
十分に思えるのですが、
なぜ出自を
高貴にしなければならなかったのか。

「バラ」と「風」は、まるで良家の
お嬢様とお坊ちゃまのようにも
感じられてしまい、それが私の
「違和感」となっているのです。

さて、作者ジョルジュ・サンドは、
作曲家ショパンの恋人として有名です。
ところがそれだけではなく、
音楽家としてはフランツ・リスト、
そして詩人のミュッセ、
医師パジェロなどと
関係を持ったといわれています。
そもそも彼女は18歳で
デュドヴァン男爵と結婚、
男爵夫人であるにもかかわらず、
凡庸な夫に愛想を尽かし、
文学青年ジュール・サンドーと
パリで暮らし始めたのが最初であり、
その後、華々しい恋愛遍歴を
繰り広げるに至ったのです。

「バラ」と「風」の組み合わせは、
あたかも社交界における男女のように
思えてなりません。
それはそうした作者の経歴が
先入観として
私の感性に作用しているのか、
それとも男女観がやはり
社交界におけるそれしか
作者の意識の中に
存在しなかったからなのか、
わかりません。
いやいや、
そのような難しいことを考えずに、
子どもの心に戻って純真に
物語を受け止めるべきなのでしょう。

〔本書「百年文庫018 森」収録作品〕
「ロイド老嬢」(モンゴメリー)
「花のささやき」(ジョルジュ・サンド)
「カブリワラ」(タゴール)

〔ジョルジュ・サンドの作品について〕
ジョルジュ・サンドの作品も
現在(2022年8月)では
文庫本は一冊しか流通していません。
「愛の妖精:プチット・ファデット」です。

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今日のオススメ!

10年以上前、藤原書店より刊行された
「ジョルジュ・サンド・セレクション」は
全10巻の単行本ですが、
まだ数冊は流通しています。

(2022.8.24)

-Rita-👩‍🍳 und 📷 mit ❤によるPixabayからの画像

【ジョルジュ・サンドをめぐる評論】

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