「小倉百人一首」(横溝正史)

人形佐七捕物帳060

正月早々、暗号謎解きと殺人事件

「小倉百人一首」(横溝正史)
(「完本 人形佐七捕物帳四」)
 春陽堂書店

「完本 人形佐七捕物帳四」春陽堂書店

佐七へ相談に来たのは
人気役者・嵐菊之助。
先日亡くなった
狂言作者・並木一草に
強請られていたのだという。
その強請のネタの
手紙を取り戻すために、
佐七は一草の残した百人一首の
読み札の謎を解くが、
その後、菊之助が殺され…。

人形佐七捕物帳第六十話の
「小倉百人一首」。
辰と豆六が歌留多の特訓を受けている
新年早々、
佐七のもとへ舞い込んだ相談。
そこから事件が始まります。

【捕物帳〇六〇「小倉百人一首」】
嵐菊之助
…相談に訪れた江戸一番の
 人気女形役者。
 一草に強請られていると訴える。
 殺害される。
並木一草
…狂言作者。卒中で亡くなった。
お琴…一草の娘。
高野珍石…一草の主治医。
稲川半左衛門…三千五百石の旗本。
稲川半之丞…半左衛門の嫡男。
浪江
…半左衛門の娘。半之丞の姉。
 嫁ぐ以前、菊之助と手紙の
 やりとりをしていた。
 その手紙が強請のもととなった。
土岐頼母…旗本。浪江の夫。
辰・豆六…佐七の乾分。
お粂…佐七の女房。
佐七…人形佐七と呼ばれる御用聞き。

created by Rinker
¥3,300 (2024/05/18 23:35:20時点 Amazon調べ-詳細)
今日のオススメ!

本作品の味わいどころ①
歌留多を使った暗号謎解き

辰と豆六の
お笑い歌留多合戦で始まった本作品。
前半部分は一草が
強請のネタに使用した
手紙のありかを探る筋書きです。
歌留多が一種の暗号となっていて、
それを解き終えた先には
次の暗号が待ち受けています。
佐七、辰、豆六、菊之助の四人が
知恵を絞り合って、
すべての暗号を解き明かします。
「なんだ、
今回は暗号解きで終わるのか、
正月早々人殺しでもないよね」と
安心しきっている
読み手の想像を裏切り、
正月早々殺人事件が発生します。
暗号が示す先の湯島天神に駆けつけた
菊之助が何者かに殺害されるのです。

本作品の味わいどころ②
急展開の殺人事件、犯人は

「やはり殺人だったか」と
驚いている読み手を尻目に、
筋書きはすぐさま展開します。
現場に赴いた佐七に
視線を送っていた武家を、
辰・豆六が尾行すると、
一件に関係していると思われる
武家屋敷が簡単に判明します。
本作品の中盤は、
事件の捜査が急展開していくのです。

本作品の味わいどころ③
集う関係者、語られる真相

続く終盤も
大どんでん返しが控えていました。
渦中の浪江が
怪しげな書き付けに呼び出された先に、
嫌疑のかかった人物を尾行していた
佐七・辰・豆六もたどり着きます。
結局関係者すべてが一堂に会し、
謎が解き明かされるのです
(ただし佐七は解き明かしません)。
ここで注目すべきは
「誰が殺したか」や
「どうやって殺したか」ではなく、
「本当の悪人は誰?」なのです。
真相は驚くべきものでした。

最後は町内の歌留多大会へと
舞台を移し、
辰と豆六が散々な目に遭い、
和やかな幕切れを迎えます。

昭和17年(1942年)に発表された本作品、
冒頭と結末の歌留多大会は
改稿の際に
付け加えられたものなのだそうです。
それによって正月らしい雰囲気が
盛り上がりました。
横溝らしい読者サービスに
溢れた本作品、ぜひご一読を。

〔「完本 人形佐七捕物帳四」
       収録作品一覧〕

すっぽん政談
唐草権太
ほおずき大尽
小倉百人一首
双葉将棋
妙法丸
鶴の千番
半分鶴之助
お俊ざんげ
七人比丘尼
鼓狂」
お玉が池
百物語の夜
睡り鈴之助
団十郎びいき
河童の捕物

(2023.1.20)

image

【春陽堂書店「完本 人形佐七捕物帳」】

created by Rinker
¥2,970 (2024/05/18 19:29:48時点 Amazon調べ-詳細)
created by Rinker
¥3,300 (2024/05/18 19:29:46時点 Amazon調べ-詳細)
created by Rinker
¥3,300 (2024/05/18 22:37:33時点 Amazon調べ-詳細)

【横溝ミステリはいかがですか】

created by Rinker
¥1,148 (2024/05/18 11:09:29時点 Amazon調べ-詳細)

【今日のさらにお薦め3作品】

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA