「生命の大進化40億年史 新生代編」(土屋健)

現在の地球へと連なる、哺乳類の時代

「生命の大進化40億年史 新生代編」
(土屋健)講談社ブルーバックス

「生命の大進化40億年史 新生代編」

新生代は、
約6600万年前から現在まで。
古生代や中生代と比べると
圧倒的に短い期間です。
しかし地層に残る
さまざまな”情報”は、
新しい時代ほど
詳しく多く残っています。
“密度の濃い情報”という
視点でいえば
”豊富な時代”です。…。

多様な生命が
爆発的に進化・発展した古生代、
恐竜を初めとした
大型生物が地上に繁栄した中生代、
それらに続いて、
現在までの時代が新生代です。
筆者・土屋健氏はこの新生代を
「哺乳類の時代」と位置づけ、
現在の生存種との関連の中で、
その歴史を紐解いています。
「生命の大進化40億年史」第3弾もまた、
これまで同様に
最新の科学的知見を盛り込み、
「哺乳類の時代」を
刺激的に解説しています。
もちろん単なる学術書とは異なります。
一般の方、そして
高校生にもわかりやすく、
ワクワクするような視点から
新生代を紹介しているのです。

〔本書の章立て一覧〕
はじめに
地質年代
第1章 始まりの時代 古第三紀
第2章 冷えていく時代 新第三紀
第3章 氷河とともにある時代 第四紀
おわりに
参考資料・索引
※くわしくはこちらから(講談社HP)
こちらに内容案内が(講談社HP)

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今日のオススメ!

本書のワクワク解説①
中生代からの繋がり、初期の哺乳類

シリーズ第3弾ですので、当然
前2冊との繋がりを大切にしています。
特に中生代で栄えた恐竜退場後の
地球の生態系の姿を、
丁寧に解き明かしています。
大絶滅を乗り越えた生物たちの世界は、
しかし恐竜の時代を彷彿とさせるほどの
生存競争の激しい時代であることが
よく分かります。
ワニに似た全長5mの
シモドエドサウルス、
飛べないものの獰猛な鳥・ガストルニス、
現代に生きていれば
龍と見間違えられるであろう
全長13mのヘビ・ティタノボアなど、
やはりスリリングな世界と
なっていたのです。

もちろん図版やイラストも豊富で、
過去の地上の姿、そして動物の外見を、
視覚的にもわかりやすく示しています。
前2冊もそうでしたが、
パラパラとめくるだけでも
面白さが伝わってくるのです。

本書のワクワク解説②
現代との繋がり、現代の動物の祖先

そして現代を含む「新生代」ですので、
現存生物との繋がりを大切にした解説も
納得のいくものです。
例えば「ネコ」については、
第1章・古第三紀では
ホプロフォネウス(P43)、
第2章・新第三紀では
マカイロドゥス(P135)、
ティラコスミルス(P.154)、
ホモテリウム、ゼノスミルス、
メガンテレオン(P202)、
そして第3章・第四紀で
おなじみサーベルタイガーの
スミロドン(P256)と、
読み手が系統的に追えるような
しくみにしてあるのです。
ネコやイヌ、ウマやウシなど、
現在の生物がどのような進化をたどって
今日に至ったかが、
わかりやすく示されているのです。

しかも、サーベルタイガーについては
その生態について、
「待ち伏せし、獲物にネコパンチを
 繰り出して倒し、
 そのまま獲物を押さえ込み、
 長い犬歯でとどめを刺す。
 そんな生き様がみえてきそうだ」

筆者自身の見解(というよりも想像)を
交えながら、専門的な見地以上に
わかりやすさを重視した
解説を行っているのです。

本書のワクワク解説③
そしてサルからヒトへ、人類の登場

新生代といえばやはりヒトの登場です。
ヒトの登場は、
地球史の中でもごく最近の、
ほんの一瞬ですので、
割かれている紙面も
決して多くはありません。
しかし第2章では
ラミダス猿人、アファール猿人、
第3章ではネアンデルタール人、
そして私たちの祖先である
ホモ属について紹介しています。
特に第3章での「生息域の重なった
2種の人類は、交配し、
子孫を残した」という新しい知見が
興味を掻き立てるはずです。

進化の実験ともいえるさまざまな形状の
生き物の登場した古生代、
恐竜を初めとした
大型生物たちの闊歩した中生代、
それらに比べ、
新生代は地味な印象がありましたが、
決してそうではないことが
分かりました。
新生代もまたスリリングな時代であり、
地上はそうした変遷を経て
現代にたどり着いたのです。
「哺乳類の時代」もまた、
ワクワク感に満ちた、
素敵な時代なのです。
ぜひご一読を。

(2024.3.11)

「生命の大進化40億年史」全3冊を
揃えると、
壮大な「地球生物史」を俯瞰できます。
3冊合計で5390円(2024年2月現在)と、
ちょっと高めですが、
得られるものは値段以上です。
気合いを入れて読もうとしなくても、
好きなときに好きな部分を読む、
あるいは眺める。
それだけで愉しくなります。
私たちの知的欲求をかなえてくれる
素敵な三冊です。
ぜひご賞味ください。

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(2024.3.11)

〔ブルーバックスについて〕
2017年に出版された土屋氏による
「カラー図解
古生物たちのふしぎな世界」

内容的に重なる部分が多いのは
仕方ないでしょう。
私は両方愉しんでいます。

こちらもオススメ!

〔「リアルサイズ古生物図鑑」について〕
「リアルサイズ古生物図鑑」も
「古生代編」「中生代編」「新生代編」と
三部作です。
本書をそれらと比較して読むと、
より立体的に古生物の世界を
捉えることができるはずです。

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技術評論社
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〔より詳しい書籍〕
技術評論社から刊行された
「古生物ミステリー」全10巻が
面白そうです。
私はまだ買っていませんが、
いずれ購入して
愉しみたいと思っています。

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Julius H.によるPixabayからの画像

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