「サピエンス前史」(土屋健)

サカナからホモ・サピエンスへ、その壮大なドラマ

「サピエンス前史」(土屋健)
 講談社ブルーバックス

「サピエンス前史」講談社ブルーバックス

ホモ・サピエンスは、突如として
誕生したわけではありません。
現在へと連綿と続く
進化の果てに生まれました。
私たちのからだをつくる
さまざまな特徴は、進化の過程で
獲得されたものです。
一朝一夕に
つくりだされたものではなく…。

昨年、同じ講談社ブルーバックスの
斎藤成也著「図解 人類の進化」を読み、
ますますヒトまでの進化の過程への
興味が高まりました。
そこで読んだのが、
今年3月に刊行された本書です。
本サイトでこれまで取り上げた
「生命の大進化40億年史」(全3巻)や
「古生物たちのふしぎな世界」
(以上ブルーバックス)、
「リアルサイズ古生物図鑑」(全3巻)の
土屋健氏の最新の著作ですので、
おもしろくないはずがありません。
何よりも「進化」に対する切り口が
特徴的であり、素敵です。

〔本書の内容・章立て〕
はじめに
序章
黎明の章
雌伏の章
躍進の章
人類の章
おわりに
付録・参考資料・索引
※詳しくはこちらから(講談社HP)
こちらに内容案内が(講談社HP)

「進化」に対する本書の素敵な切り口①
魚類から現生人類誕生までの五億年史

生物の40億年史は
探せばたくさん見つかるのですが、
脊椎動物誕生から
ホモ・サピエンスに至るまでの
直径の系列をたどるという視点での本は
あまり見当たりません。
袂を分かった動物種についての
詳しい解説を省き、
現生人類までの一本道を
明確に示しているのです。

「進化」に対する本書の素敵な切り口②
仮説・仮定・推論を交えての物語仕立て

でも、「進化」は難しい学問領域です。
日常生活とはまったく異なるスケールの
時間軸・空間軸の中で
捉えていかなくてはならないからです。
その点、本書は
学術的な書き方ではなく、
物語仕立てで語られていくため、容易に
理解できるしくみになっています。
文系の方でも
中学校卒業程度の理科の知識があれば、
簡単に読みこなすことが
できるはずです。

もちろんそのためには
定説として確立されたものだけでなく、
仮説・仮定・推論等の
不確定な事項も交え、
一つの明確な流れを示しているのです。
学術書ではなく一般書、
一般の方々が理解できるための
工夫と配慮が随所に見られます。

その章立ても
わかりやすいものとなっています。
「黎明の章」では、魚類から始まり、
上陸を果たした時期、
「雌伏の章」では、多様化して
哺乳類となったものの
恐竜に怯えながら過ごしていた時期、
「躍進の章」では、その恐竜の絶滅した
「空白域」を埋めるように
大躍進した時期、そして
「人類の章」ではその見出しの通り、
いくつか生まれた「人類」から
ホモ・サピエンスへと
分化した時期について
まとめられています。
まるで一つの壮大な人類創世の
ストーリーを味わっているかのような
錯覚に陥ります。

「進化」に対する本書の素敵な切り口③
「特徴の獲得」と「分化」から見た道すじ

本書の素敵な切り口の三つめは、
「袂を分かった動物種」との「分化」と、
そのきっかけとなった「特徴」を
解説している点にあります。
「進化」とはある意味「分化」であり、
どの時期にどの動物種と
どのように枝分かれしていったのかが、
わかりやすく示されています。
何よりもそれらを【70の道標】として
提示していることが、
理解を深めるのに役立っています。
私たちは70もの大きな分化を経て、
ホモ・サピエンスとなったということが
よくわかります。

そうした【70の道標】に該当する部分は、
本文中で太字で示されるとともに、
「”物語”の案内図」として
図示されていて、
視覚的に捉えることが
できるようになっているのです。
また、登場する動物種は
豊富なイラストで示されていて、
こちらも目で見て
わかるしくみになっています。

古生代カンブリア紀に現れた
初期の「サカナ」から、
私たちが何を獲得し、
あるいは何を捨象し、
今を生きる
ホモ・サピエンスとなったのか、
その壮大なドラマを体感できます。
科学の苦手な方でも
十分に愉しめる一冊です。
ぜひご賞味ください。

(2024.6.3)

〔関連記事:土屋健氏著書〕

S KによるPixabayからの画像

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