「ガリバー旅行記」(スウィフト)②

小さな国イギリス、小さな国ニッポン

「ガリバー旅行記」(スウィフト/山田蘭訳)角川文庫

誰もが名前は知っているものの、
まともに読んではいない小説
「ガリバー旅行記」。
第2話はおなじみ巨人国
「ブロブディンナグ渡航記」です。

巨人国ブロブディンナグに流れ着き、
巨人の国のすべての大きさと比して、
自分の小ささを思い知ったガリバー。
ついでに自分の国の卑小さも
悟ることになります。

ブロブディンナグ国王は
ガリバーに質問します。
国会議員の選挙制度について、
「強欲な投票者が、
 自らの領主や
 人望の厚い近隣の紳士より、
 ずっしりと重い財布を持った
 見知らぬ人間を
 選んでしまうことはないのか」

政治について、
「暗愚でよこしなま君主の意図に沿い、
 腐敗した内閣と共謀し、
 公共の利益を犠牲にすることによって、
 選挙に費やした金を
 とりもどそうとすることはないのか」

財政運用について、
「国家の税収は
 一年に五、六百万ポンドと
 最初に言っておきながら、
 後に支出の話になると、
 その二倍以上の額にふくらんだのは
 おかしいではないか」

軍隊について、
「自分たちの手で選んだ代表に
 政治をまかせておきながら、
 いったい誰を恐れ、
 誰を相手に
 戦争をするつもりなのか」

これはそのまま日本に
当てはるのではないでしょうか。
政治と金の問題は
いっこうに改善される気配がない。
赤字国債が無秩序に乱発され、
財政赤字は1兆円を超える。
集団的自衛権行使の範囲は
地球の裏側にまで及ぼうとしている。
在任期間が相当長くなった首相に、
ぜひブロブディンナグ国王の前で
説明をお願いしたいものです。

さて、スウィフトは
300年後の日本を予見していた!
わけはありません。
イギリスも日本も
議院内閣制の政治システム。
「300年経っても
そのシステムの問題点は
ほとんど解決されていない」
ということなのでしょうか。
それとも「日本の政治のレベルは
300年前の英国並み」
ということなのでしょうか。

国王はさらにガリバーに迫ります。
「おまえの国では
 どんな地位をめざすにせよ、
 美徳は何ひとつ必要ではないらしい。
 人徳が厚いものが貴族になる、
 勇猛果敢なものが軍人になる、
 高潔なものが裁判官になる、
 国を深く愛しているものが
 議員になる、
 というわけではないのだな。」

はい、その通りです。と、
ついつい現代日本に住む私たちは
答えてしまいそうです。

(2018.11.28)

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