「バッタを倒しにアフリカへ」(前野ウルド浩太郎)②

夢をかなえつつある筆者の、リアルタイムのライブ映像

「バッタを倒しにアフリカへ」
 (前野ウルド浩太郎)光文社新書

昨日取り上げた本書、
研究者の書いた本としては
確かに際物です。
自然科学の知識を
得るためのものではありません。
研究苦労日記とでもいうべき
内容です。
それを承知で、私は本書を
中学生に強く薦めたいと思います。
これからの生き方を考えるための
良書だと思うからです。

昨今、自分のやりたいことしか
しない子どもたちが増えてきました。
好きな教科しか
勉強しないならまだしも、
勉強が嫌いだから
一切やらないという子どもも
珍しくありません。
授業を受けることすらやめて
別室登校する子どももいます。
その子たちも将来に
なにがしかの希望は持っています。
「自分のやりたいことをやりたい」という。
多くはゲームクリエイターや
アニメーターなどですが。

考えてみると、
「自分のやりたいことをやれ」という
本や情報はたくさんあるのですが、
「自分のやりたいことを将来やるために、
今やりたくないことでも
やるべきことはしっかりやれ」と教える
メディアはほとんどないのです。

本書には、
「自分のやりたいことをやり通すには、
これだけの困難が
待ちかまえている」ということが
しっかりと書かれています
(というよりも全編それ一色です)。
相当な覚悟を持って臨まなければ、
自分のやりたいことを
やり通すことはできないという
当たり前のことを、
子どもたちには
読み取ってほしいのです。

そして本書からは、
「困難を乗り越えるには、
相応の下地が必要である」ことも
間接的に描かれています。
本書第3章には、
モーリタニアに渡る前の
筆者の経歴についても
手短に記載されています。
筆者は決して「やりたいことだけを
やってきた」のではないのです。
大学・大学院の在学9年間の中で
身に付けたものがあったからこその
異国での研究だと思うのです。
必要なことを
難儀して身に付けなければ
やりたいことなどできないという
当然の道理を、
子どもたちに自覚してほしいのです。

筆者は夢を
「かなえた」わけではありません。
夢をかなえる途上です。
なぜなら現在の肩書きは
「任期付き研究員」、
身分はまだまだ
不安定なままだからです。
だからこそ
強い説得力を持っているのです。
本書は夢をかなえつつある筆者の、
リアルタイムのライブ映像を
見るかのような
心地好い緊張感があります。

ぜひ中学生に読んでほしい一冊です。
そして生き方を考えるための
参考書にして欲しいと思います。

(2019.5.3)

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