「誰の上にも 青空はある」(HABU)

心が折れそうになったときに開く一冊

「誰の上にも 青空はある」(HABU)講談社文庫

面白い本を見つけてしまいました。
ぱらぱらとめくると、
美しい空の写真が満載です。
そしてそれぞれに
短い詩が添えられています。
カバー裏には「写真詩集」とありました。
もっとも「詩」というよりは
「キャッチ・コピー」のような
短文なのですが。

その空写真は96ページ、
どれ一つとして
同じ表情を見せていません。
澄み渡った空もあれば
雲の垂れ込めた空もある、
朝の爽やかな空もあれば
夕暮れの侘しさを湛えた空もある、
夏の深い群青の空もあれば
冬の寒々とした鈍色の空もある。
普段仕事をしていて建物の中にいると
気付きにくいのですが、
空というのはこんなにも
色とりどりの変化を
見せていたのですね。

写真もさることながら、
添えられた詩が、
日々の緊張感を解きほぐすとともに、
体にエネルギーを与えてくれます。
「頑張るんじゃない、楽しむんだ」
と肩をたたかれ、
「何がおまえを縛ってるんだ
 モラルか、法律か、宗教か、常識か、
 それとも誰かにほめられたいのか
 おまえはおまえだろ
 だれかが作った

 そのちっちゃな柵を飛び越えろ」
と背中を押されます。

中学生にぜひ薦めたいと思います。
読書はバランスが大切です。
現代作家の瑞々しい感性に触れるのも、
明治の文豪の
格調高い文章を味わうのも、
海外の文学作品で自分の知らない
空気と文化に接するのも、
もちろん大切なのですが、
こうした手軽に読める本も必要です。

最初の頁から読む、というのではなく、
すぐ手が届くところに置いておき、
気が向いたときにページをめくる、
勉強を頑張って
一息ついたときに眺める、
心が折れそうになったときに開く、
というのが
本書の正しい読み方かも知れません。

著者のHABUさんの経歴を見てみると、
「10年間のサラリーマン生活を経て
写真家に転身。
空の風景をテーマに、
世界各地で撮影」とあります。
空専門の写真家でした。
Amazonで調べてみると、
魅力的な空写真集を
いくつも出版していたのでした。
ハードカバーの写真集は
値が張りますので、
この文庫本写真集は貴重な存在です

HABUさんの
本書以外のハードカバー本なら、
大きい分だけ
感動も広がるのではないかと考えます。
ただ、大きい分だけ、
値段も高価になります。
こうした、
子どもたちが個人購入するのが
難しい本(の中で良質なもの)を、
学校図書館では積極的に
入れて欲しいと願っています。

(2019.5.10)

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