「ロボット創造学入門」(広瀬茂男)②

ヒューマノイドは原子炉の夢を見るか

「ロボット創造学入門」
(広瀬茂男)岩波ジュニア新書

日本人は人型ロボットに憧れます。
人型ロボットは子どもの頃から
私たちに夢を与えてきました。
鉄腕アトムしかり、
ドラえもん(これは猫型か!)しかり、
人型ロボット=ヒューマノイドです。

数年前、ホンダの鈴鹿工場を見学した際、
人型ロボットASIMOを
見る機会に恵まれました。
うれしかったです。
TVでしか見たことのなかったASIMO。
生ASIMOを見ることが
できたのですから。

なんでも二足歩行ロボットをつくるのは
技術的に難しいことが
多かったのだとか。
歩くために片足を上げたとき、
どうしてもバランスが崩れて
倒れてしまうのだそうです。
人間はそれを感覚的に
コントロールできているから
倒れないのですが。

でも、生ASIMOは
スイスイと歩いていました。
感動しました。
日本のハイテク技術の底力を
見た思いがしました。
日本は、やはりすごいです。

さて、
昨日取り上げた本書のあとがきに、
次のような記述があります。
「(日本の)ロボット開発研究の
 方向性は一貫性をもたず、
 将来的な見通しを
 明確にもたないまま、
 ときには遊びのようなロボット開発が
 国のプロジェクトに
 なったりしてきた。

 このつけが、今回の事故
 (福島第一原発事故)での
 ロボットの初動を遅らせて
 事故を拡大させ、
 またアメリカ製のロボットが
 先に使われるなどと、
 ロボット大国日本の面目を
 大いにつぶす事態を
 招いてしまったのではないだろうか。」

高線量の放射線が飛び交っている
原子炉建屋内では、
人間が立ち入ることができず、
事故を起こした福島第一原発では、
燃料デブリがどういう状態で
存在しているのかさえ把握できず、
廃炉作業は
一向に進んでいない状態と聞きます。

人間にはできない、
ロボットでなければ
できないことがあるのに、
それができるロボットがない。
ASIMOは壊れた原発の中には
入ってくれません。
私たちの国は平和な日常の中で、
甘い夢を見すぎていたのかも
しれません。

著者が言うように、
ロボットはあくまでも実用に
適した形であるべきなのでしょう。
「廃炉」という超現実を
目の当たりにしたとき、
その悪夢を取り除き、
私たちの子孫に夢を与えてくれるのは、
人型ロボットではなく、
ヘビ型ロボットや
クモ型ロボットたちなのでしょうか。

(2019.5.22)

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