「少女」(ウンセット)

半年ぶりに再会した少女二人はどうなったのか?

「少女」(ウンセット/尾崎義訳)
(「百年文庫077 青」)ポプラ社

いつまでも仲良しでいようと
誓ったシーフとエルナの
二人の少女。
エルナの引っ越し以来、
疎遠になっていたものの、
シーフは彼女に手紙を書き、
アネモネ摘みに出掛けようと誘う。
その当日、
半年ぶりに再会した二人は…。

シーフとエルナは12、3歳の女の子。
中学校1年生くらいでしょうか。
微妙な年頃の女の子二人の、
微妙な関係を描いています。

私は仕事で子どもたちを観察していて
気になることがあります。
男子は5~7人くらいの
集団をつくりたがります。
善いことも悪いことも、
一人ではできない。
集団になると何でもできる。
ところが女子は二人一組になりたがる。
一人がもう一人を独占したがる。
何をするにも
一緒にいようとするのです。

驚いたことに、
それとよく似た記述が
本作品にも見られます。
「街の男の子たちは、
 いつでもどこでも
 男の子のするように、
 集団で遊んでいた。」
「女の子たちは、
 ふたりずつ組になる。」

子どもたちの性質は、
洋の東西も時代も問わず、
変わらないものなのかも知れません。

さて、半年ぶりに再会した
二人はどうなったのか?
微妙にすれ違います。
シーフがエルナと二人で食べようと
奮発した、値段の高い
棒付きチョコレート菓子を、
エルナがほとんど
食べなかったことから始まります。

そして、二人は
迷子になった男の子と出会い、
その子を世話し始めます。
ここで亀裂が生じます。
シーフに懐いていた男の子に、
エルナは例のチョコ菓子を与え、
男の子の関心を奪うことに成功します。

シーフには、せっかく自分の小遣いの
すべてを使って買ったチョコ菓子を
エルナが食べなかったばかりか
男の子に与えたことが
心のささくれとなりました。
そしてエルナには、
親友への勝利感が、
境遇の違いによる屈辱感を
呼び覚ますきっかけとなったのです。

事件らしいものは
何も起きていないのですが、
「ふたりは短い
 さよならの言葉をいい交わす。
 それから、
 ふたりはついぞ逢うことはない。」

で物語は終わります。

引っ越す際、
「日曜日ごとに逢いましょうね」と
約束しながら、
「ふたりは顔を
合わさなかった」のですから、
二人の仲はもともと
その程度だったのでしょう。
でも、そこがいかにも
女の子らしいと思うのです。
少女特有の瑞々しい感性が
しっかりと描かれた傑作です。
かつての少年少女にお薦めします。

※ウンセットは
 はじめて聞く名前でしたが、
 実はノーベル文学賞を受賞している
 ノルウェーの女性作家でした。

※男子は集団をつくりたがる。
 女子は2人一組になりたがる
 (20年前、私はこれを
 「男子のジャニーズ症候群、
 女子のパフィー症候群」と
 勝手に名付けていました)。
 本作品発表は100年前の1918年。
 100年前も今も、
 子どもたちの本質は
 変わらないのかも知れません。

(2019.9.14)

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