津波に関する知識の絶対量を増やすことが先決
「津波災害」(河田惠昭)岩波新書
先日の西日本豪雨の際、
避難指示の後に
避難行動をした人の割合・避難率が、
3.4%にとどまることが
報道されていました。
避難が必要なほど
危険が押し迫った人間100人のうち、
97人までが避難していないという現実。
これが結果的に
被害を大きくしているのでしょう。
本書のまえがきには
明確に書かれています。
「私が読者に特に伝えたいことは、
『避難すれば助かる』という
事実である。」
そして
「津波に関する知識の
絶対量を増やすことが先決である。」
やはりこれが大切なのでしょう。
私も理科教師の端くれであり、
自然災害の脅威について
子どもたちに教えているのですが、
私も知らなかった
津波の「常識」がたくさんありました。
というよりも、
一般的に言われていることには
多くの間違いがあったのです。
間違い①
「津波は引き波からやってくる」
津波は海水が
大きく引いてからやってくる。
これまで疑っていませんでしたが、
これが間違いでした。
引き波で始まることもあれば
押し波で始まることもある。
押し波なら海水は引かずに
突然押しよせてくるのです。
間違い②
「津波は第一波が最も大きい」
これも疑ったことが
ありませんでしたが、
間違いでした。
実際には第何波が最大になるかは
その津波の性質によって
異なるのだそうです。
間違い③
「津波は海の水の流れである」
これなどは至極当然のように
思えますが、やはり間違いでした。
水だけではなく、土砂や流木、破砕物、
果ては自動車、家屋、船舶など、
ありとあらゆるものが
速さを持って衝突してくるのです。
その運動エネルギーを考えると、
「たかが水」ではないのです。
間違い④
「地震が小さければ津波も小さい」
これも間違いです。
地震が小さくても
大きな津波が押しよせることが
あるのだそうです。
決して油断はできないのです。
そのほかにも、
「津波と高波・高潮の違い」
「地形による津波の屈折・回折の影響」
「ハザードマップの活用方法」等、
初めての知識が
たくさんありました。
「津波から身を守るための
教科書」のような本書が2010年に
出版されていたにもかかわらず、
私たちの国はその1年後、
東北地方太平洋沖地震による
津波によって、
2万人にものぼる尊い命を
犠牲にしてしまいました。
本書にまとめられてある
「災害に関わる知識」を、
国民一人一人が
正しく身に付けるための方策こそ、
私たちの国に
求められているのだと思います。
※3.11を踏まえた本書の「増補版」が
すでに出版されていました。
そちらも早急に読みたいと思います。
(2019.10.4)