「アウルクリーク橋の出来事」(ビアス)

最後の2行に仕掛けが施されています

「アウルクリーク橋の出来事」
(ビアス/小川高義訳)
(「アウルクリーク橋の出来事/豹の眼」)
 光文社古典新訳文庫

「アウルクリーク橋の出来事/豹の眼」

ファーカーは今や橋の上で
絞首刑になろうとしていた。
足元の板が外され、
彼は宙吊りになったものの、
縄が切れたのか、
彼の身体は落下し、
川を流されていく。
次々に撃ち込まれる銃弾を
逃れて、彼がようやく
たどり着いたのは…。

昨日取り上げた「人間と蛇」「妖物」
妖しさに惹かれて、
ビアスの短編集を読みました。
全14編、
どれも面白く読むことができました。

「人間と蛇」は、恐怖の展開の最後に
「現実」がありました。
「妖物」は、目に見えない非現実の中に
「恐怖」が存在していました。
ビアスの短編作品は(少なくとも
この短編集については)、
おおむねこのどちらかに
分類されるといえます。

本作品は3章立てになっていますが、
その3つの部分すべて
最後の2行に仕掛けが施されています。


絞首刑になろうとしている男
ファーカーの状況が示されています。
一つ一つ事実を丹念に
積み上げることによって、
死が目前に迫っているようすが
忠実に描かれています。
その上で
「と、まあ、言葉で書けば
 そのようなことが、
 死にぎわの男の脳内から出た、
 というよりは、
 一瞬、脳裏をよぎったのと同時に、
 大尉が軍曹にうなずいた。
 軍曹は横へ動いた。」

時間が一気に加速し、
死刑執行の瞬間です。


ファーカーが刑に処せられる原因と
なった出来事が述べられています。
南北戦争の戦線付近。
通りかかった南軍の兵士と
何気ない会話をするファーカー。
彼は南軍のために手柄を
立てようとする思いを口走る。
そこで
「一時間後。すでに日の暮れた道を、
 ふたたび兵士が通過した。
 さっきとは逆に、
 すなわち北へ向けて帰った。
 北軍の斥候だったのだ。」

運命の歯車が狂います。


ファーカーが困難を乗り越えて
妻のもとへたどり着くまでが
息をつかせぬ勢いで記されています。
運良く首の縄が切れ、
川に流されるファーカー。
銃弾は彼の身体をかすめるも、
当たりはしない。
瀕死の状態で岸辺に這い上がる。
必死に森へ逃げ込む。
苦しさをこらえて歩き続け、
愛らしい妻のもとへ。ところが
「……………」
とどめの一撃となる2行は、
ぜひ読んでお確かめください。

というわけで本作品は
「人間と蛇」タイプの短編です。
そしてその作品構成の絶妙さと
急転直下の「仕掛け」を考えたとき、
本作品はまさに
ビアスの最高傑作といえます。
「死」を主題としていますが、
「死」とは何か考えることは
「生」を見つめることに
必ずつながります。
ぜひご一読を。

〔本書収録作品一覧〕
アウルクリーク橋の出来事
良心の物語
夏の一夜
死の診断

板張りの窓
豹の眼

シロップの壼
壁の向こう
ジョン・モートンソンの葬儀
幽霊なるもの
レサカにて戦死
チカモーガの戦い
幼い放浪者
月明かりの道

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(2020.3.19)

Pedro FiguerasによるPixabayからの画像

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