「百年文庫021 命」

三者三様の生き方、死に方

「百年文庫021 命」ポプラ社

「レナ・ヴィース シュトルム」
少年時代の「私」の、
かけがえのない友人の
パン屋の娘レナ・ヴィース。
彼女は幼い頃にかかった
疱瘡の跡さえなければ
美しい女性であったに違いない。
未婚で通したが、
彼女の半生は
つつましやかでありながらも
幸せなものであった…。

百年文庫第21巻のテーマは「命」。
わかりやすすぎるようで、
実は誰しもがきちんと
理解できていないのが
「命の大切さ」でしょう。
子どもたちにこれをどう伝えるか?
難しいことです。
誰しも「命は大切だ」と
思っているのですから。
でも、それなのに、世の中には
自他の命を軽視しているような
行為や事件が後を絶ちません。

「最後の一葉 O.ヘンリー」
画家の卵・ジョンシイは
肺炎にかかり、
生きる気力を失う。
彼女は窓外の蔦の葉すべてが
風に舞い落ちたとき、
自分の命がつきるのだと
思い込む。
その夜、
嵐の訪れにもかかわらず、
最後の一枚は落ちることなく
壁に張り付いていた…。

本書に描かれているのは、
レナ、ベアマン、クリスチーネ、
三者三様の「生き方」と「死に方」です。
レナは平凡であるものの
明るい人生を送りました。
ベアマンは人生の最後に
見事な一花を咲かせます。
クリスチーネは不幸続きの
暗澹とした一生でした。
しかし共通しているのは、
それを受け入れている
他者がいるということです。
レナにとっては語り手「私」、
ベアマンにとっては
画家の卵のスウとジョンシイ、
クリスチーネにとっては
軍人カリクストゥスです。
以前「レナ・ヴィース」の記事で、
「ささやかな人生でもいい、
それを認めて覚えていてくれる
人があれば…」と書きましたが、
それが大切なことではないかと
思うのです。

created by Rinker
ポプラ社
¥683 (2026/01/30 22:32:22時点 Amazon調べ-詳細)

「お守り ヴァッサーマン」
孤児院で暮らしたクリスチーネは
女中として働き続けるが、
貧しさからは
なかなか抜け出せなかった。
幾度も職場が変わり、
辛い思いばかりしている。
彼女が二十歳の頃、
奉公した老軍人が亡くなり、
彼女はお守りを手渡たされる…。

百年文庫は三人の作者の作品を
収めてあるのですが、
この一冊はすべて海外の作家です。
日本人作家の作品にふさわしいものが
見当たらなかったのでしょうか。
考えてみれば日本人は、
「切腹」だの「特攻」だの、
命を粗末にすることを
「美徳」としてきた民族です。
もしかしたら日本人作家には
本当の意味で「命の大切さ」を訴える
作品がないのではないか?
そんなことをふと考えてしまいました。
いやいや、そんなことはありますまい。

人生の折り返し地点を
とうに過ぎてしまった私には、
考えさせられる部分の多い
三作品でした。
若い人が読むとどんな感想を持つのか、
興味があります。

(2022.5.17)

mostafa merajiによるPixabayからの画像

【関連記事:O.ヘンリー】

【百年文庫はいかがですか】

【今日のさらにお薦め3作品】

【こんな本はいかがですか】

created by Rinker
¥888 (2026/01/30 22:32:22時点 Amazon調べ-詳細)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA