「化学・意表を突かれる身近な疑問」(日本化学会編)

「問題発見」「問題解決」「情報発信」に、見事に応えている

「化学・意表を突かれる身近な疑問」
(日本化学会編)講談社ブルーバックス

「化学・意表を突かれる身近な疑問」

「いままで気にしてなかったけど、
そう言われてみると
おかしいな…
いったいなぜなんだろう?」と
思わず意表を突かれる
疑問はあります。
暮らしの中で出合う
そうした「なぜ」のうち、
物質にからむ疑問を集めて
謎解きをしてみました…。

理科教師として、
自然科学に親しめるような本を探し、
機会を見つけて
子どもたちに紹介しています。
物理・化学・生物・地学の
4つの分野のうち、
生物・地学分野については中学生向けの
本はたくさん見つかります。
物理もそれなりに見つかります。
なぜか化学分野に
なかなかそれが見つからないのです。
岩波ジュニア新書には
化学分野の本がきわめて少ないし、
講談社ブルーバックスは
中学生には難しすぎます。
でも一冊見つけました。
やや古くなってしまった
(2001年出版)のですが、
中学生でも面白く読めること
請け合いです。

中学生でも読める本書の面白さ①
「疑問」の目の付け所が秀逸

何よりもテーマの取り上げ方、
つまり「疑問」の目の付け所が
素晴らしいの一言です。
サブタイトルにもなっている
「昆布はなんでダシが海水に
溶け出さないの?」をはじめとして、
「ビールはなぜペットボトルに
入ってないの?」
「おもちは焼くと
なぜやわらかくなるの?」
「フグはなぜ
自分の毒にやられないの?」など、
「ああ、そういえば」と思うような、
これまで気づかずにいた「疑問」が
ずらりと並んでいます。
NHKの「チコちゃんに叱られる!」に
出てきそうな「疑問」だらけです。

現代の中学校の学習は、
「問題発見」が
重要なテーマとなっています。
ところが子どもたちだけでなく、
大人の私たちも
「問題」を発見するのが苦手です。
本書はそうしたこれからの時代の
「問題発見」の視点を教えてくれる
貴重な一冊といえます。

中学生でも読める本書の面白さ②
難しい部分に立ち入らない

当然、その「疑問」に対する
必要最小限の知識を、
わかりやすくかみ砕いて
簡潔に説明しています。
難しいところには
立ち入らないようにしながら、
子どもたちが興味関心を
失わないレベルで
上手に「問題解決」をしているのです。
現代の学習において
「問題発見」に続いて大切なのは
この「問題解決」なのです。
中学校で学習した理科の内容で、
このように
「問題解決」できるのだということを
教えてくれています。
これなら子どもたちはこれまで以上に
自然科学の世界に
親しめると思うのです。

中学生でも読める本書の面白さ③
見開き完結&親子会話形式

それが見開きの一頁で
しっかりと完結しているのが
さらに素晴らしいところです。
長々と続けず、簡潔にまとめ、
読みやすくしているのです。
さらに親子の会話形式で書かれていて、
中学生はまるでお父さんお母さんから
教えてもらっているような感覚で
読み進められるはずです
(大人は息子娘に教えているような
感覚になります)。
これも現代の学習で重視されている、
わかりやすい「情報発信」の
方法の一つだと思います。
難しいことを難しいままではなく、
いかにも易しく感じられるように
「情報発信」の方法を工夫するか、
一つの参考例となるはずです。

【本書の章立て一覧】
まえがき
Ⅰ 台所の疑問
Ⅱ 食卓の疑問
Ⅲ 身近な道具の疑問
Ⅳ 部屋まわりの疑問
Ⅴ 街の疑問
Ⅵ 自然界の疑問
Ⅶ からだの疑問
Ⅷ 身づくろいの疑問
Ⅸ 外食・おやつの疑問
Ⅹ あやしい話への疑問
本書で取り上げた「疑問」のテーマ一覧
さくいん

「問題発見」「問題解決」「情報発信」という
現代の学習のキーワードに、
見事に応えている素敵な一冊です。
残念なことに絶版中であり、
古書を探すしかありません。
全国の中学校図書館に
ぜひ備えて欲しいと願うとともに、
この改訂新版の出版が実現することを
期待したいと思います。

(2023.1.10)

chiara tibertiによるPixabayからの画像

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