「時の崖」(安部公房)
死の先には、さらに深い絶望が用意されている 「時の崖」(安部公房)(「無関係な死・時の崖」)新潮文庫 ……負けちゃいられねえよなあ……勝負だもんなあ……負けるために、勝負してるわけじゃねえんだからなあ……あ、これ、昨日の...
死の先には、さらに深い絶望が用意されている 「時の崖」(安部公房)(「無関係な死・時の崖」)新潮文庫 ……負けちゃいられねえよなあ……勝負だもんなあ……負けるために、勝負してるわけじゃねえんだからなあ……あ、これ、昨日の...
「分からない」そして「何かに変身している」こと 「壁」(安部公房)新潮文庫 その瞬間、ぼくはもう一人のぼくの正態を見破ってしまったのです。それはぼくの名刺でした。そう思ってみれば、それはどう見ても見まがうことのない名刺で...
汚職やそれをつくりだす権力構造 「泥芝居」(杉浦明平)(「百年文庫083 村」)ポプラ社 太郎さが死んで間もなく、息子の次郎さの名前が耳に入ってくるようになった。次郎さが漁業協同組合の理事になったげな。土地改良組合の理事...
「親の心」が痛いほど伝わってくる 「赤まんま忌」(洲之内徹)(「百年文庫097 惜」)ポプラ社 私の三男が京都で、交通事故で死んだ。大という名前で、十九歳であった。事故とはいっても、オートバイに乗って走っていて、道の曲り...
「僕」が「幸福」と捉えているものは 「幸福」(安岡章太郎)(「教科書名短篇 家族の時間」) 中公文庫 ぶっきらぼうな駅員が差し出したおつりは、十円紙幣と勘違いしたのか、五円多いものだった。浮いた五円の使い道を空想していた...
優しさを感じさせる文体や設定は、おそらくは罠 「白い蛾」(安部公房)(「題未定 安部公房初期短編集」) 新潮文庫(「安部公房全集001」)新潮社 船旅をする「私」は、船長に「白蛾丸」という珍しい船の名前の由来を尋ねる。船...
では、本当の「ぼく」はいったいどれ? 「バベルの塔の狸」(安部公房)(「壁」)新潮文庫 詩人である「ぼく」は、自らの空想を「とらぬ狸の皮」と名付けた手帳に書き込んでいた。ある日、P公園で出くわした狸のような奇妙な獣は、「...
「町」と「人」の、何と淀んでいることか 「廃市」(福永武彦)(「百年文庫069 水」)ポプラ社 「僕」が紹介された旧家・貝原家には、おばあさんとその娘・安子がいるだけで、若夫婦とは顔を合わすことがなかった。ある日、墓参り...