「火山噴火」(鎌田浩毅)

災害を正しく知り、火山とともに生きる。

「火山噴火」(鎌田浩毅)岩波新書

先日は河田惠昭著「津波災害」を読み、
津波に関する自身の
知識の乏しさを実感したのですが、
本書を読んでもまた、
己の無学さを思い知った次第です。

第1章「火山噴火とはどんな現象か」
第2章「噴火のタイプとその特徴」

この2つの章では、
火山噴火そのものの現象と、
火山の分類について、
マグマの種類(特に粘りけ)と関連づけて
懇切丁寧に解説しています。
中学校の教科書では、火山の噴出物には
火山弾・火山礫・火山灰・
火山ガス・熔岩などがある、
くらいしか取り上げられていません。
火山の多様で変化に富んだ姿や
スリリングな噴火現象について
このように語ることができたら、
理科の授業は
もっと面白くなるのですが
(学習指導要領は、なぜか面白くもない
火成岩と鉱物に重点を置いている)。

第3章「噴火は予知できるか」
第4章「噴火が始まったらどうするか」

この2章では、
火山災害に対する減災についての
考え方が書かれています。
地震予知はまだまだ難しいのですが、
火山の噴火予知については
かなり技術が発達していることを
知りました。
そして起こりうる災害と
その対策について説明しています。

それにしても、私は子どもの頃、
火山は活火山・休火山・死火山に
分けられると習った記憶があります。
しかし、
火山の過去の活動が明らかになり、
火山の寿命は長く、
歴史時代の噴火活動の有無だけで
分類することは無意味であり、
現在は休火山や死火山という分類は
なされていないそうなのです。
それにかわって活火山を
A~Cのレベルで分類しているのです。
かつて休火山といわれた富士山でさえ
レベルB(活動度が高い活火山)に
分類されているのですから驚きです。
「富士山噴火」は
SFや空想のものではなく、
かなり現実的なものだったのです。

第5章「火山とともに生きる」
著者は火山災害の
恐ろしさを述べるだけではなく、
火山が私たちにもたらす
恩恵について最終章で語っています。
富士山をはじめとする
各地の火山の風光明媚な山並みの景色、
人々を癒やすとともに
大きな観光資源となっている温泉、
水はけの良い肥沃な土壌等々。
恐ろしさの対価として
多くの恵みがもたらされていることに
気付かされました。

筆者は
「災害は短く恵は長い」と説きます。
確かにその通りです。
だからこそ私たちの民族は、
この災害だらけの島国に
有史以来住み続けてきたのです。
災害を正しく知り、
火山とともに生きる。
それが日本人の在り方なのです。

(2018.11.6)

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