「バイオマスは地球環境を救えるか」(木谷収)②

「読む」技術を高めるための良書

「バイオマスは地球環境を救えるか」
 (木谷収)岩波ジュニア新書

昨日取り上げたこの
「バイオマスは地球を救えるか」ですが、
中学校3年生の理科の学習の
参考図書として薦めたいのですが、
やや躊躇せざるを得ない部分があります。
内容が難しいのです。

第1章から「太陽エネルギーは
アデノシン三リン酸(ATP)の形で
化学エネルギーに変換され
植物や動物の体内で
アデノシン二リン酸
(ADP)に変わって…」
以下、
「カルビン・ベンソン回路」
「C3植物・C4植物」
「ハッチ・スラック回路」
「オキサロ酢酸」…、
専門用語が多々登場します。
高校の生物を履修していなければ
理解できない内容です。
岩波ジュニア新書にしては
レベルが高すぎます。

それでも中学校3年生に
本書を薦めたい理由は、
これからのエネルギーについて
考えることのできる
好内容であること以外に、
「読む」技術を高めるための良書であると
判断したからにほかなりません。

本書で身に付けるべき
「読む」技術の一つは、
難しい用語の意味がわからなくても
文章全体の大意を把握できる力です。
難解用語で躓き、
先に進めないのでは
読解力は向上しません。
わからない用語は
あとで調べるものとして、
まずは全体を掴み取る力が、
これからは
求められてくると思うのです。

そして用語を調べること自体が
高度な学習につながります。
ネットで検索するだけでも
十分学習になります。
辞書や辞典を引けるのであれば
なお素晴らしいと思います。

本書で身に付けるべき
「読む」技術のもう一つは、
文章だけではなく
付随する資料の情報も
合わせて読み取る力です。
高度な内容であるため、
理解を助けるための資料が本書には
ふんだんに用意されています。
しかも写真、チャート、模式図、
グラフ資料、統計資料など、
形式もさまざまです。

学力の指標として
用いられるPISAでも、
図表・グラフ・地図などを含む文章
(「非連続型テキスト」という)の
読解が重視されています。
本書はそうした近年求められている
読解力向上のための
最適のテキストと
いえると思うのです。

読書というとどうしても
文学作品に偏りがちですが、
文学作品の読解と
学術書の読み取りは
自ずと求められるものが
異なるはずです。
むしろ中学3年から
高校にかけての読書は、
文学から新書本へと
シフトしていくべきと考えます。
ぜひ中学校3年生に
薦めたい一冊です。

(2018.12.14)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA