「わんぱく天国」(佐藤さとる)①

全編遊び、遊び、本書はまさに子どもの遊び図鑑

「わんぱく天国」(佐藤さとる)講談社文庫

昭和10年代、
軍港として栄える横須賀市。
海の見える「按針塚」が
近所のわんぱくたちのあそび場。
めんこ、たこあげ、一銭飛行機、…。
夏休み、ついに少年たちは
「人が乗る飛行機をつくる」という
秘密の計画にとりかかる…。

昭和10年代の子どもたちというと、
私の父親の世代になります。
当時の子どもたちは
こんなにも生きる力に
溢れていたのかと驚かされます。
そして遊びの天才だったのだと
気付かされます。
全編遊び、遊び、本書はまさに
子どもの遊び図鑑なのです。

第1章
ここでの遊びは「斥候ごっこ」。
西吉倉のがき大将・明は
隣町の柿ノ谷の少年カオルから
教えられた斥候のしかたを、
仲間とともに試してみます。
それを知った柿ノ谷のがき大将・一郎は、
カオルとともにいたずらを仕掛けます。

この手旗信号の方法や
斥候ごっこで使う暗号などが
実に詳しく描かれています。
そしていたずらを仕掛ける側も
節度を守りつつ最大限の効果を
上げようとしているようすが
ほのぼのと描かれています。

第2章
ここでは「めんこ遊び」「凧づくり」が
取り上げられています。
前回のいたずらの仇を取るため、
明は一郎に挑戦状をたたきつけます。
受けて立つ一郎は
明に「めんこ」対決を提案。
白熱した勝負の末、
少年たちは仲良くなります。

お互いに意地をはりながらも
頑なにはならず、
相手を受け入れる。
このような温かい人間関係は素敵です。
「めんこ」は
私の子どもの頃もありましたが、
この時代の「めんこ」は実に多種多様。
また、市販の凧で凧揚げはしましたが、
「凧づくり」は
したことがありませんでした。

第3章
「一銭飛行機」がここでの遊びです。
一銭で売っている紙飛行機の
飛距離比べが高じて、明と一郎の
自作飛行機対決へと展開します。

この「一銭飛行機」だけは
全く分かりません。
この当時、こうしたおもちゃが
あったのでしょうね。

第4章
いよいよ「人の乗れる
一銭飛行機製作」です。
この部分は、
厳密には実際の出来事ではなく、
創作=ファンタジーなのですが、
これまでの流れから十分
現実味を帯びて迫ってきます。

子どもたちだけでなく、
私たち戦後生まれの人間にも
多くのことを教えてくれる一冊です。
中学生だけでなく、
大人のあなたにも薦めたい一冊です。

(2019.5.6)

まきこ 川崎によるPixabayからの画像

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