一味違う二十面相と永遠の若さの小林少年
「怪奇四十面相」(江戸川乱歩)
ポプラ社

「透明怪人」事件で捕縛されていた
二十面相は、拘置所の中から
犯行予告を行う。
それには以後自身のことを
「四十面相」と呼ぶ旨の
要求があった。
四十面相の脱獄を阻止するため、
名探偵・明智小五郎が乗り出す。
しかし拘置所では…。
少年探偵団シリーズ8作目にあたる
本作品、その名も「怪奇四十面相」。
これまで二十面相は
「黒い魔物」(「少年探偵団」)
「妖怪博士」「青銅の魔人」
「魔法博士」(「地底の魔術王」)
「透明怪人」と、
トリッキーな異形キャラクターに扮して
悪事を働いていたのですが、
今回は原点回帰したのでしょうか、
そのまま他の人物に変装するだけの、
素の二十面相として活躍します。
ただし「続・怪人二十面相」や
「怪人二十面相Ⅱ」では
いささか具合が悪かったのでしょう、
「四十面相」と、変化する数が
インフレーションを起こして
しまったのは仕方なしとしましょう。
「怪奇四十面相」読みどころ①
これまでと異なるお宝探し合戦
これまでの二十面相の悪事は
「財宝を盗み取る」「明智への
復讐のために世間を騒がせる」の
二本立てでしたが、
今回はこれまでとは路線が違います。
お宝探しなのです。
二十面相一味と明智・小林組との
お宝探し合戦となっているのです。
四十面相へと進化した二十面相は、
やることが一味違います。
「怪奇四十面相」読みどころ②
奇抜なものへと変装合戦
異形キャラクターへの
変化はありませんが、
かわりに奇抜なものへと変化します。
小林少年が浮浪少年に変装して
追跡を試みると、
二十面相は郵便ポストに化けて
それをかわします。
二十面相が髑髏人間の扮装を
したかと思えば、
小林少年は百科事典に化けて
不法侵入を試みます。
もちろん二十面相は得意の明智小五郎に
今回も変装します。
それでいて二十面相の
変装を見抜けない小林少年。
優秀なのか間抜けなのか
判然としません。いやいや、
四十面相へと進化した二十面相の
変装術は、これまでと一味違うのです。
「怪奇四十面相」読みどころ③
大活躍の年齢不詳・小林少年
本作品は、なぜか明智小五郎は
あまり前面に出ません。
その分小林少年が大活躍します。
子ども向けにはこちらの方が
読みごたえがあるのでしょうが、
今回はさらになぜか
少年探偵団も出番がありません。
二十面相は小林少年と
ほぼ一騎打ちの状態です。
それでもやり込められてしまう
二十面相の間抜けぶり。
四十面相へと進化した二十面相は、
やはりこれまでとは一味、
というかどこか違うのです。
ところでこの小林少年、
今回もおきまりのように
「リンゴのようなほおに、
かわらしい微笑をうかべ」て
いるのですが、彼は一体
何歳になったのでしょう?
初登場の「怪人二十面相」は
戦前の設定であり、
本作品は間違いなく
戦後であるはずです。
以前の小林少年と
今回の小林少年は別人なのでしょうか。
それとも年齢すらごまかせるほどの
変装の名人!?
小林少年、恐るべし。
(2020.4.12)

【青空文庫】
「怪奇四十面相」(江戸川乱歩)
