「赤い靴」「パンをふんだ娘」(アンデルセン)

アンデルセン、この2編はもっと厳しいです

「赤い靴」「パンをふんだ娘」(アンデルセン/天沼春樹)
 (「アンデルセン傑作集」)新潮文庫

育ての親である老婦人が
死の床についているとき、
少女カーレンは
お気に入りの赤い靴を履いて
舞踏会に出かけてしまう。
彼女の履いた赤い靴は
勝手に踊り続け、
脱ぐことさえできなくなる。
それは死ぬまで踊り続ける
呪いだった…。
(「赤い靴」)

自分の美貌を鼻に掛ける
高慢な少女インゲル。
里帰りの途中、
ぬかるみに靴が汚れるのを
嫌った彼女は、
土産に持たされたパンを
ぬかるみに置き、
その上を歩こうとする。
彼女はパンとともに、
ぬかるみの底へと沈んでいった…。
(「パンをふんだ娘」)

美女に対して
厳しい最終場面を与えるアンデルセン。
彼の女性観は一体
どのようなものだったのか…。と、
前回締めくくりました。
この2編はもっと厳しいです。

カーレンは首切り役人に頼んで、
自分の両足を切断してもらうことで
命をつなぎ、
インゲルは推定70年近くも
闇の世界で暮らす。
美少女の運命としては、
あまりに過酷です。

恩人である老婦人を見捨てた
カーレンの罪は
確かに重いかも知れません。
一方、インゲルの場合は
食べ物を粗末にしたのは事実ですが、
誰かに迷惑をかけたわけではありません。
飽食の現代日本であれば、
一体何人泥の底に
沈まなければならないか。

ここで大切なのは、アンデルセンが
敬虔なクリスチャンであったことです。
だとすれば、
死後の救済
=魂だけは神のもとへ導かれる、
ということを重視していたと
推察できるのです。

カーレンは両足義足のまま、
教会のボランティアに身を捧げ、
天に召されます。
インゲルもまた、改心した後、
小鳥に生まれ変わり、
自分が踏みつぶしたパンの重さと等しい
パンくずを他の鳥たちに分け与えたとき、
天に召されます。

よく「本当は残酷な○○童話」で
紹介されがちなアンデルセン童話2作、
実は魂の救済の物語なのでした。

※参考までに、収録作品一覧。
「親指姫」
「人魚姫」
「赤い靴」
「マッチ売りの少女」
「ある母親の物語」
「あの女は役たたず」
「ふたりのむすめさん」
「ユダヤ人の娘」
「どろ沼の王さまの娘」
「パンをふんだ娘」
「アンネ・リスベス」
「おばさん」
「木の精のドリアーデ」
「アマー島のおばさんに聞いてごらん」
「歯いたおばさん」

※こうした短編集の場合、
 アマゾンはじめ、
 多くのネット書店、
 いや、出版社のサイトでさえも
 収録作品一覧を
 載せていないことが多く、
 とても残念に思います。

(2018.12.10)

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