「バイオマスは地球環境を救えるか」(木谷収)①

私たちの文明が「持続可能」であるために

「バイオマスは地球環境を救えるか」
 (木谷収)岩波ジュニア新書

これからのエネルギーをどうするか?
私たちが生きている
この先数十年だけでなく、
子や孫、それ以降の世代まで
視野に入れた数百年を考えたとき、
どんなエネルギーが主流になるのか?
石油・石炭や天然ガス等の化石燃料は
いずれ枯渇するのがわかっています。
福島第一原発事故を経た今、
原子力で未来像を
描くことができません。
私たちの文明が
「持続可能」であるためには
エネルギーも「持続可能」なものである
必要があります。

その一つとしての
バイオマスに焦点を当て、
その研究開発の現状と
課題や問題点を解説したのが本書です。

1章 バイオマスって何だろう?
バイオマスは植物の光合成に
由来するものであることから始まり、
その種類や生産の状況、
さまざまな活用方法等、
バイオマスの基本事項について
説明されています。

2章 バイオマスは地球を救えるか?
大気中のCO2量を変化させない
カーボン・ニュートラルという
バイオマスの特性について
述べられています。
その特性と
地球温暖化や酸性雨といった
地球規模の環境問題との
関わりについて
明らかにしています。

3章 化石燃料にかわれるか?
4章 原材料になれるか?

この2章では、
筆者はバイオマスの燃料・原料としての
利用の可能性に言及しています。
ただし、
コストを抑えるためには
燃料と原料の同時活用が
必要になることにも
触れられています。

5章 地域で多角的に活用する
コストを抑えて
バイオマスを有効に利用するためには、
一つの地域でバイオマスの
生産から変換、利用、最終処理まで
一貫して行う、
つまりエネルギーの地産地消こそが
必要になるのです。
そのモデルケースとして
国内外の事例を紹介しています。

6章 持続的バイオマスの未来
バイオマスを有効利用して
持続可能社会を構築することこそが
私たちの未来を
持続可能にしていくのだという
筆者の考えが明確に示されています。

ともすれば「原子力か化石燃料か」や
「再生可能エネルギーは
小規模でコストが高く付く」で
終わってしまいがちのエネルギー論に
一石を投じる一冊だと思います。
広い視野から私たちの社会の
将来像を語り合いたいものです。

(2018.12.14)

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