コロナと対峙している現実と大きく重なります
「復活の日」(小松左京)角川文庫

196X年の冬、
アルプス山中で墜落した
遭難機に積まれていたもの、
それは人間をはじめとする
地上の生きものすべてを
死に至らしめる
凶暴なウイルスだった。
春になり、雪が融け始めると、
欧州を中心に、
謎の死が世界に広がる…。
新型コロナウイルスが
世界を席巻している中で
本作品を取り上げるのは
いささか気が引けます。
しかし、40年ぶりに再読し、
そこに書かれてある筋書きが、
コロナウイルスと対峙している
現在の世界と大きく重なり、
衝撃を受けました。
「警告しておきたいのは、世界中、
一般人の間で、
インフルエンザという病気が、
体験上、比較的かるく
見られている事である。」
確かに現実世界でも、感染拡大以前は
そのように見られていたはずです。
「たかがインフルエンザ」。
本文中に何度も登場します。
最初は「たかが」だったのは
物語も現実も同じです。
「解明されるのに、
ある程度時間がかかる。
そして、わからぬうちに、
その時代の理解を絶したような
厄災がこないとも…」。
ウイルスの実態が掴めないまま、
虚構世界はパンデミックを迎えます。
現実世界でも、他の国の被害状況を
対岸の火事のように眺めているうちに、
感染拡大を迎えてしまいました。
「ここ二、三日、ニューヨーク株式は
暴落に継ぐ暴落だ。」
このあと、
工場閉鎖による物品の生産停止、
交通網の遮断、医療崩壊等々、
現実世界でもすでに起こっていること、
そしてこれから
起こりうるであろうことが、
次々に繰り広げられていきます。
「総理は早晩非常事態宣言を
出す必要があることは
みとめていた。ただ、
それを出す時期については、
十分慎重に、という意向だった」。
感染が拡大しても
なかなか非常事態宣言を出せない
日本の首相。
このあたりに至っては、
虚構と現実がピタリと一致します。
「われわれは、
この厄災に正面から
立ち向かうことをしなかった。
たとえば為政者は、
大衆は、官僚は、
この闘いに団結して
全面的に力をそそいだか?」
人類のほぼ全てが絶滅しようとした際、
今まさに
死にゆこうとしている科学者が、
すでに死に絶えた人々に発した
問いかけです。
これはそのまま現在の私たちへの
問いかけになるはずです。
「どんなことにも…終りはあるさ…
ただ、どんな終り方をするかが、
問題だ」。
殉職した医師のつぶやきです。
不吉な予言を孕んだこの一言が、
物語の上だけのものであることを
切に願います。
小松左京が本作品を著したのは
なんと1965年。
55年前に、すでに
世界的パンデミックを
引き起こすウイルスと、
それによって引き起こされる
世界の混乱を、
小松は予見していたかのようです。
SF作家の想像力は、
かくも恐ろしいものなのです。
※小松は本作品の時代設定を、
近未来などにせず、
執筆当時そのままにしています。
それが現代において
いささかも色褪せていない
リアリティを生み出しています。
(2020.4.5)





