「ウィステリア荘」(ドイル)

名探偵と対等に渡り合う切れ者警部登場

「ウィステリア荘」(ドイル/日暮雅通訳)
(「シャーロック・ホームズ最後の挨拶」)
 光文社文庫

「シャーロック・ホームズ最後の挨拶」

「グロテスクな体験」をしたという
人物・エクルズが
ホームズに調査を依頼する。
親しくなった友人に
招待されたが、
一晩明けると家人全員が
消え失せていたというのだ。
やがて彼を招待した青年・
ガルシアが他殺死体として
発見される…。

ドイル
シャーロック・ホームズシリーズ
短篇38番目にあたる作品です。
作品集「シャーロック・ホームズ
最後の挨拶」の第一作に収録されました。
一夜にして
招待してくれた家人がいなくなるという
奇妙な事件の裏には、
当然、大きな秘密が隠されています。

〔主要登場人物〕
シャーロック・ホームズ

…探偵コンサルタント。
「わたし」(ジョン・H・ワトスン)
…語り手。医師(元軍医)。
 彼の仕事に同行する。
スコット・エクルズ
…依頼主。招待してくれた家の歌人が
 消失するという事件に巻き込まれる。
アロイシャス・ガルシア
…エクルズをウィステリア荘へ
 招待した青年。何者かに殺害される。
メルヴィル
…エクルズの友人。
 ガルシアを紹介した。
ヘンダースン
…ハイ・ゲーブル荘に住む富豪。
ルーカス
…ヘンダースンの友人にして秘書。
バーネット
…ヘンダースン家の家庭教師。
 四十歳の英国女性。
ジョン・ウォーナー
…ヘンダースン家の元庭師。
 解雇された。
ベインズ警部
…サリー州警察警部。有能な人物。
ウォルターズ…ベインズ配下の警官。
ダウニング…ベインズ配下の警官。
グレグスン警部
…スコットランド・ヤード警部。

本作品の味わいどころ①
家人消失は目隠し、それとも…

招待してくれた家人の消失は
悪戯などではなく、当然、何かの
目くらましであることは確かです。
事実、その翌日には
招待した青年ガルシアが
遺体で発見されているのですから。
でも、エクルズをペテンにかけた
ガルシア自身が
なぜ殺害されているのか?
使用人たちはどこへ消えたのか?
家人消失の裏に
隠されているものは何か?
謎の連続です。
これはやはりホームズの推理を
待つしかないのでしょう。
事件に漂うミステリアスな雰囲気を、
まずはじっくり味わいましょう。

本作品の味わいどころ②
警部は引き立て役、それとも…

ホームズものに限らず、
探偵小説に「警部」なるものが現れると、
事件の真相と外れた方向に
捜査を展開させ、
読み手のミスリードを誘うとともに、
名探偵の引き立て役となるケースが
ほとんどです。
本作品の場合、
レストレード警部と並ぶ
スコットランド・ヤードの名警部
グレグスンが登場、
さらに地方の事件であることから
ベインズ警部なる人物が
登場しています。
このベインズ警部が
なかなかの味わいを出しています。

「自分のやり方でやる」と言った
警察官の多くは失敗し、
名探偵の引き立て役に
成り下がってしまうのですが、
このベインズは違います。
誤認逮捕とも思える行動に走るのですが
そこからの展開が面白いのです。
名探偵と対等に
渡り合う警部の登場です。
詳しくはぜひ読んで確かめてください。
この切れ者警部の活躍こそ、
十分に味わうべき
本作品のポイントです。

本作品の味わいどころ③
単なる殺人事件か、それとも…

で、その裏には、
とんでもない事件が隠れていたのです。
これももう、
ぜひ読んで確かめてください、としか
言いようがありません。
さすがにこれは
読み手には見抜けないでしょう。
「赤毛組合」を彷彿とさせるような
構成です。

本事件ばかりは、ホームズの魅力は
十分には発揮されていません。
長篇も含め60あるホームズ作品に、
このようなものがあっても
面白いでしょう。
ぜひご賞味ください。

(2024.2.23)

〔「シャーロック・ホームズ最後の挨拶」〕
まえがき
ウィステリア荘
ブルース・パーティントン型設計書
悪魔の足
赤い輪団
レディ・フランシス・カーファクスの失踪
瀕死の探偵
最後の挨拶
 ―シャーロック・ホームズの
  エピローグ―
注釈/解説
エッセイ「私のホームズ」松岡正剛

〔関連記事:ホームズ・シリーズ〕

〔光文社文庫:ホームズ・シリーズ〕
「緋色の研究」
「四つの署名」
「シャーロック・ホームズの冒険」
「シャーロック・ホームズの回想」
「バスカヴィル家の犬」
「シャーロック・ホームズの生還」
「恐怖の谷」
「シャーロック・ホームズ最後の挨拶」
「シャーロック・ホームズの事件簿」
ホームズ・シリーズは
いろいろな出版社から
新訳が登場しています。
私はこの光文社文庫版が一番好きです。

Antonios NtoumasによるPixabayからの画像

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