「日時計の中の女」(横溝正史)
ようやく始まり唐突に終わる殺人事件 「日時計の中の女」(横溝正史)(「七つの仮面」)角川文庫 あの日時計殺人事件の犯人はほかにある。庭の日時計から遺体が発見された家屋の持ち主の妻は、過去の事件の真犯人が自分の命を狙ってい...
ようやく始まり唐突に終わる殺人事件 「日時計の中の女」(横溝正史)(「七つの仮面」)角川文庫 あの日時計殺人事件の犯人はほかにある。庭の日時計から遺体が発見された家屋の持ち主の妻は、過去の事件の真犯人が自分の命を狙ってい...
「錯覚」が支配する物語世界と現実 「錯覚屋繁盛記」(半村良)(「夢の底から来た男」)角川文庫(「暴走する正義」)ちくま文庫 自分一人がこの世の屑と、劣等感を噛みしめていた木下は、ある日、自分に超能力が備わっていることに気...
日常を切り取り、コラージュのように 「日本三文オペラ」(武田麟太郎)(「百年文庫047 群」)ポプラ社 アパートと云っても――いや、そんな何となく小綺麗で、設備のよくととのつた西洋くさい貸部屋を意味する言葉を使ってはいけ...
その奥行きの深さを十分に堪能すべき 「デイジー・ミラー」(H.ジェイムズ/小川高義訳)新潮文庫 スイス・ヴェヴェーで出会った美女・デイジーミラーは、今はローマに滞在していた。伯母からの手紙を受け取ったウィンターボーンはロ...
四つの証拠が四人の別の人物を指し示す 「名月一夜狂言」(横溝正史)(「名月一夜狂言」)創元推理文庫(「完本 人形佐七捕物帳一」) 春陽堂書店(「幽霊山伏」)出版芸術社 風流好きの隠居が催した、各界の著名人を集めた月見の会...
まるで暗号を読み解くかのような 「千鳥」(鈴木三重吉)岩波文庫 夏に避暑に訪れて以来、二度目となるある小さな島へやってきた「自分」。逗留先の小母さんの家に上がると、夏にはいなかった少女・お藤さんがいた。彼女とは以前からの...
それにしても菊池寛の脚色は見事です 「俊寛」(菊池寛)(「藤十郎の恋・恩讐の彼方に」) 新潮文庫(「百年文庫048 波」)ポプラ社 それは、彼が鹿ヶ谷の山荘で飲んだ如何なる美酒にも勝って居た。彼がその清冽な水を味って居る...
「ささやか」でありながらも「確かな」生き方 「茗荷谷の猫」(木内昇)(「茗荷谷の猫」)文春文庫 絵を描いて細々と生計を立てている文枝は、最近思うような絵が描けなくなっていた。彼女は、月に一度来訪する緒方という男に絵を預け...
「改稿途中作品」、よりおどろおどろしく 「首・改訂増補版」(横溝正史)(「消すな蠟燭」)出版芸術社 髪の下からかっと見開いた眼が物凄い。口は半分ひらいていて、黒ずんだ舌がダラリとのぞいている。生首はあきらかに素人の手によ...
そうした現実との符合が連続する中で 「最終戦争」(今日泊亜蘭)(「最終戦争/空族館」)ちくま文庫(「あしたは戦争」)ちくま文庫 米軍機動力の象徴、サンジャック沖に遊弋している核熱空母エンタプライズⅣ号になにか異変があった...