「ほんとうのリーダーのみつけかた 増補版」(梨木香歩)

私たち一人一人に「内なるリーダー」が必要となる

「ほんとうのリーダーの
   みつけかた 増補版」(梨木香歩)
 岩波現代文庫

一見、ハウツー本のような
タイトルですが、そうではありません。
「あなたの、
 ほんとうのリーダーは、
 自分の中の目」
、つまり
自分自身を見つめる目が大切であり、
自分の中に埋もれているリーダーを
掘り起こす作業が必要なのだと
説いているのです。
本書には、作家・梨木香歩による、
現代日本を冷静に見つめた
厳しい目と温かい眼差しの両方が
満ちあふれています。

梨木はまずはじめに
「群れというもの」の章の中で、
人が「群れる」ということについて
述べています。
日本の社会には「同調圧力」が
強くはたらいていることを
解説するとともに、
群れのコミュニケーションの
大きな柱は「言葉」での伝達であり、
日本語を大切にする必要があることを
訴えているのです。

そして次の
「あなたのなかのリーダー」の章では、
「群れる」ことの本質を明らかにし、
その上で「自分のなかの
リーダーの掘り起こし」について
説明しています。
「群れる」ことは、
安易なことや低次なことと
捉えられることが多いのですが、
梨木はそれを「人の本能」と
解き明かします。
そして集団に帰属しようとして
卑屈になる自分に対する
自己嫌悪感を取り上げ、
それを「自分を見ている自分の目」を
ごまかせないことに起因すると
分析します。
だからこそ自らの行動を律すべき
「内なるリーダー」を見つけることが
重要であると示しているのです。

最後の「チーム・自分」の章では、
そうした「内なるリーダー」を
はっきりと持っている人間の事例が
提示されていきます。そして
「内なるリーダー」の機能のためには、
批判精神を持つことや
自分で考えることの大切さに
言及しています。また、
自分で考えるための材料としての
「情報」の吟味と、
「情報」に対して疑問を持つことの
有効性へと展開していきます。

元号が「令和」に変わった途端、
不安定な時代が訪れてきました。
コロナにより社会は分断され、
世界も人も大きな傷を負いました。
ロシアによるウクライナ侵攻は、
世の中に漂っていた「きな臭さ」を
現実のものとし、
世界に衝撃を与え続けています。
私たちが今までに経験したことのない
時代に突入しているのです。
そうした時代の中で、
流されずに堅固に、
折れずにしなやかに
生き抜いていくためには、
どうしても私たち一人一人に
「内なるリーダー」が
必要となるはずです。

梨木が本文中で紹介している著作
「僕は、そして僕たちはどう生きるか」
登場人物・ショウコの言葉が印象的です。
「黙ってた方が、何か、
 プライドを保てる気がするんだ。
 でも、それは違う。
 傷ついていないふりをするのは
 かっこいいことでも
 強いことでもないよ。
 あんたが踏んでんのは私の足で、
 痛いんだ、早く外してくれ、って
 言わなきゃ」

※本書は、2020年に出版された
 「ほんとうのリーダーのみつけかた」に
 「今、「君たちはどう生きるか」の
 周辺で」
 「この年月、
 日本人が置き去りにしてきたもの」
 「引っ掛かる力、
 そして新しいXさんの出現を」を
 加えて「増補版」となっています。

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(2022.6.14)

BananayotaによるPixabayからの画像

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