これは序章に過ぎないのか
「光の帝国 常野物語」
(恩田陸)集英社文庫
前回に引き続き、
後半5編の概略です。
後半部はさらに盛り上がり、
常野一族の謎が広がっていきます。
「⑥光の帝国」
とある分教場。
そこには特殊な「力」を持った
子どもと大人が集まっていた。
予知能力を持ったあや、
秀でた音楽の才を持つコマチ先生と岬、
発火能力を持つ信太郎、
そして長寿のツル先生。
そこを軍の特殊部隊が急襲する。
登場する常野一族:
ツル先生・あや・コマチ先生・岬・信太郎
「⑦歴史の時間」
高校生の亜希子は授業中、
自分が空を飛び、
遠い昔の記憶を辿る夢を見る。
その夢の中では同級生の記実子も
一緒に飛んでいて、「ずっと貴方を
見守っている」と告げる。
亜希子は自分が何を思い出すべきか
わからずにいた。
登場する常野一族:亜希子・記実子
「⑧草取り」
「私」は「彼」に連れられて
「草取り」を見せてもらう。
町の至る所に、常人には見えない
毒々しい赤い植物が生えているのだ。
「彼」はそれを上手に駆除していく。
ところが人間にも
繁茂し始めたことを知り、
「私」は不安になる。
登場する常野一族:「私」「彼」
「⑨黒い塔」
OL亜希子は死期の迫った父親のことが
気になるが、気持ちの整理がつかない。
両親は本当の父母ではないからだ。
亜希子の乗ったバスは
真夜中に事故を起こし、大惨事となる。
空を飛んで脱出した亜希子は
記実子と再会する。
登場する常野一族:
亜希子・記実子・美耶子・
ツル先生・春田夫妻
「⑩国道を降りて…」
優れた聴覚を持つチェロ奏者の律は、
恋人のフルート奏者・美咲とともに
帰国し、常野一族の集まる
パーティへと向かう。その会場には
一族の長老・ツル先生が待っていた。
ツル先生はなぜか初対面の美咲を見て
涙ぐむ。
登場する常野一族:律・美咲・ツル先生
全て読み終えても、
謎は深まるばかりです。
戦時中に軍はなぜ
常野一族を狙っていたのか?
常野一族の果たすべき役割は何なのか?
「あれ」と「草」は
同一のものなのか異なる存在なのか?
3編に登場するキーパーソン・
記実子の役割は?
春田夫妻は光紀・記実子の両親である
貴世志・里子と推察されるが、
春田一家はどう関わってくるのか?
10の筋書きと
そこに存在する人物たちが
まったく収束せず、
むしろ拡散したまま幕を閉じます。
これは本編ではなく、
それに繋がる序章に過ぎないのか?
なんとこの「常野物語」には
第2部「蒲公英草紙」と
第3部「エンド・ゲーム」が
存在するとのこと。
急いで買わなければ。
※最近のSFやファンタジーは、
全て解決させずに謎を残したまま
結末を迎えるものが多いのですが、
それも一つの時代の
流れなのでしょうか。
(2019.8.17)