「元16歳」たちからのメッセージ
「16歳 親と子のあいだには」
(平田オリザ編著)岩波ジュニア新書
16歳に限らず、13歳(中学1年生)から
18歳(高校3年生)まで、
親と子どもの間には
微妙な「あいだ」があると思います。
親子関係の最も難しい
時期なのではないでしょうか。
自分がその年代だったときも
そうだったし、
自分の子どもがその年代に
なったときにもそう感じました。
本書は、各界で活躍している
12人の「元16歳」たちが、
その頃の親子関係をふり返り、
現代の「16歳」に
エールを送っているものです。
ここには現代の16歳だけでなく、
その親にとっても参考にできる部分が
数多く含まれています。
「父も母も、私もまた、不完全です。
そんな私たちは、
はじめて家族をやったのだ、と
気づきました。
練習なしの、いきなりの本番。
私たちは練習なしで
はじめて組まされ、
はじめて家族というものを
やり遂げようとしたのだ」。
(角田光代・作家)
考えてみればその通りです。
私も20数年前はじめて親になり、
以来ぶっつけ本番のまま
20数年間の子育てを行ってきました。
練習もなければやり直しもききません。
一発勝負であり、
手探りなのは仕方ないのです。
「無意味にリプレイを繰り返す
ゲームと違い、
真摯に生きる人生は
一瞬一瞬が意味を持ち、
輝きを持っているはずです。
自分が目指すものに向かって、
今できることを一つずつ
自分の手でやっていく。
それが真摯に生きるという
ことでしょう。」
(野口聡一・宇宙飛行士)
耳の痛くなるお話です。
自分はここまで真摯に
生きてきたのだろうかと
つい自問してしまいます。
「最近、私は、どんどん父親に
似ていっているように感じます。
そして、知らないうちに、
影響を受け、
引き継いできた思いがあります。」
(森山開次・ダンサー)
親も子も、そう思える日が
いつか来ると素晴らしいだろうなと
思います。
圧巻だったのはやはり平田オリザ。
16歳の時に高校を休学して
自転車による世界一周旅行を
敢行した話はあまりにもすごすぎて
市井の小人に過ぎない私には
参考にすらならないのですが、
この一節が気に入りました。
「私の両親に尊敬できるところが
あったとすれば、それは彼らが、
立派な親を演じきった点に
あると思います。
表だっては狼狽せず、
頭ごなしに反対もせずに、
自分たちが決めた
「子どもを自由に育てる親」を
演じきったところは偉かった。」
私もそうありたいと思いながら、
ここまで来ましたが、
できたものやらできなかったものやら。
気がつけば先日15日、
次男が成人式を迎えました。
子ども全てが成人するまでを
「子育て」とするならば、
私の子育ては
もう終わったことになります。
終わってみればやはり
「一発勝負」だったということが
しみじみと感じられます。
今現在16歳であるあなたと、
今現在16歳のお子さんを
育てているあなたに
お薦めしたいと思います。
※参考までに内容一覧を。
「16歳の、完全無欠と不完全」
(角田光代・作家)
「茅ヶ崎から宇宙を目指した16歳」
(野口聡一・宇宙飛行士)
「おせっかいな元16歳から、
16歳のあなたへ」
(山本シュウ・ラジオDJ)
「伸びたり縮んだりして、
一人で忙しくて、
その世界が恐かったとき」
(上田假奈代・詩人)
「いつもハープとともに、
でも普通の高校生」
(吉野直子・ハープ奏者)
「親離れと友人づくり
―大人と子どものはざまで」
(藤原和博・和田中学校校長)
「響きあう心」
(森山開次・ダンサー)
「1972年の微睡み」
(奥泉光・作家)
「過保護」
(穂村弘・歌人)
「16歳―116段の階段と
コーヒー牛乳の日々」
(渡辺真理・アナウンサー)
「私の16歳―親との「間」」
(イ・ヨンスク・
一橋大学院言語社会研究科教授)
「親を演じる、子どもを演じる」
(平田オリザ・劇作家・演出家)
(2019.8.22)