「同時代のこと」(吉野源三郎)
時空を超えて私たちに迫ってくる吉野の問いかけ 「同時代のこと」(吉野源三郎)岩波新書 関心の強度こそ人間の人間としての実在性を支える内延量にあたるものであって、社会的・歴史的現実というものも、この関心にもとづく私たちの切...
時空を超えて私たちに迫ってくる吉野の問いかけ 「同時代のこと」(吉野源三郎)岩波新書 関心の強度こそ人間の人間としての実在性を支える内延量にあたるものであって、社会的・歴史的現実というものも、この関心にもとづく私たちの切...
あり得ない設定、でも十蘭なら 「黒い手帳」(久生十蘭)(「久生十蘭短篇選」)岩波文庫 自分の机の上にいま一冊の手帳が載っている。一輪挿しの水仙がそのうえに影を落としている。一見、変哲もない古手帳にすぎぬが、この中には、あ...
短編小説と随筆との中間にひろがる曖昧な領域の「旨味」 「永日小品」(夏目漱石)(「文鳥・夢十夜」)新潮文庫 雑煮を食って、書斎に引き取ると、しばらくして三四人来た。いずれも若い男である。その内の一人がフロックを着ている。...
リットン×岡本綺堂=最強オカルト・ユニット 「貸家」(リットン/岡本綺堂訳)(「世界怪談名作集」)河出文庫 「われわれは最近思いもつかないことに出逢ったよ。ロンドンのまんなかに化け物屋敷を見つけたぜ」「ほんとうか。何が出...
格調高き文体から繰り出される「ジョーク」 「喜寿童女」(石川淳)(「女体についての八篇 晩菊」) 中公文庫 「わたし」が手に入れた古書「妖女伝」には、喜寿祝いの夜、忽然と姿を消した江戸の名妓・花女の「その後」が書かれてあ...
カムフラージュに見えて実は伏線 「さぼてんの花」(深尾須磨子)(「百年文庫063 巴」)ポプラ社 あなたはわたしというものに愛想をつかすだろうか。いかに相弟子とはいいながら、はじめて逢った彼に、しかも異邦人の彼に送って貰...
これは「食レポ」ならぬ「殺レポ」か? 「日本に於けるクリップン事件」(谷崎潤一郎)(「潤一郎ラビリンスⅡ」)中公文庫 クラフト・エビングに依って「マゾヒスト」と名づけられた一種の変態性慾者は、云う迄もなく異性に虐待される...
その女を自分好みにカスタマイズ 「赤い屋根」(谷崎潤一郎)(「潤一郎ラビリンスⅡ」)中公文庫 此の男を巧く欺して、いいように操ってやることが面白くもあり、それほど自分に腕のあることが愉快でもあった。ところが、それがそうで...
静かに浮かび上がる作者の実生活とその情念 「曇った硝子」(森茉莉)(「女体についての八篇 晩菊」) 中公文庫 魔利の部屋では何でもがすぐに無くなる。まるで魔のように、無くなる。すると、不安な心と、小さな後悔とが、魔利の胸...
凝縮し、結晶化したような最後の一文 「黄泉から」(久生十蘭)(「久生十蘭短篇選」)岩波文庫(「文豪怪談傑作選・昭和篇」) ちくま文庫 ルダンさんの家庭塾には光太郎ばかりではなく、光太郎のただひとりの肉親である従妹のおけい...