「バベルの塔の狸」(安部公房)
では、本当の「ぼく」はいったいどれ? 「バベルの塔の狸」(安部公房)(「壁」)新潮文庫 詩人である「ぼく」は、自らの空想を「とらぬ狸の皮」と名付けた手帳に書き込んでいた。ある日、P公園で出くわした狸のような奇妙な獣は、「...
では、本当の「ぼく」はいったいどれ? 「バベルの塔の狸」(安部公房)(「壁」)新潮文庫 詩人である「ぼく」は、自らの空想を「とらぬ狸の皮」と名付けた手帳に書き込んでいた。ある日、P公園で出くわした狸のような奇妙な獣は、「...
いや、大人版「不思議の国のアリス」です。 「S・カルマ氏の犯罪」(安部公房)(「壁」)新潮文庫 その瞬間、ぼくはもう一人のぼくの正態を見破ってしまったのです。それはぼくの名刺でした。そう思ってみれば、それはどう見ても見ま...
新潮文庫「飢餓同盟」における二つのヴァージョン 「飢餓同盟(1970年版)」(安部公房) 新潮文庫 この町自体が、まさに一つの巨大な病棟だ。どうやら精神科の医者の出るまくなどではなさそうである。傷だらけになった飢餓同盟に...
だからといって寓話ではない、異色の安部作品 「飢餓同盟(1954年版)」(安部公房) 新潮文庫 温泉が枯渇し、行き詰まった町・花園。閉ざされた片田舎で疎外された人間たちは、秘密結社「飢餓同盟」を結成し、権力者の牛耳るこの...
「現実」と「異世界」の間にある「壁」 「百年文庫076 壁」ポプラ社 「ヨナ カミュ」…カンヴァス、それは全然白のままだった。その中央にヨナは実に細かい文字で、やっと判読できる一語を書き残していた。が、その言葉は、sol...
友人のために安部が文章として建立した墓標 「終りし道の標べに(真善美社版)」(安部公房)講談社文芸文庫 何故そうしつように故郷を拒んだのだ。僕だけが帰って来たことさえ君は拒むだろうか。そんなにも愛されることを拒み客死せね...
常識の範囲内では受け入れ不可能の未来の到来 「第四間氷期」(安部公房)新潮文庫 先生は、未来というものを、日常の連続としてしか想像できなかった。断絶した未来…この現実を否定し、破壊してしまうかもしれないような、飛躍した未...
ノーベル賞の先の先を行く安部公房。 「第四間氷期」(安部公房)新潮文庫 未来を予言できる電子計算機「予言機械」を開発した「私」は、その実験としてある中年男の未来を予言させようと、男の調査に取りかかる。しかし男は情婦の部屋...
自分が知っている昭和の姿がそこかしこに現れている 「日本文学100年の名作第7巻 公然の秘密」新潮文庫 「鮒」(向田邦子)勝手口に置かれていたバケツには、一匹の鮒が入っていた。体長15センチほどのそれには、確かに見...
読み手の理解を強力に拒み続けます 「箱男」(安部公房)新潮文庫 これは箱男についての記録である。ぼくは今、この記録を箱の中で書きはじめている。頭からかぶると、すっぽり、ちょうど腰の辺まで届くダンボール箱の中だ。つまり、今...