「百年文庫048 波」
波頭に立たされたとき、人はどう生きるべきか 「百年文庫048 波」ポプラ社 「俊寛 菊池寛」それは、彼が鹿ヶ谷の山荘で飲んだ如何なる美酒にも勝って居た。彼がその清冽な水を味って居る間は、清盛に対する怨みも、島に、ただ一人...
波頭に立たされたとき、人はどう生きるべきか 「百年文庫048 波」ポプラ社 「俊寛 菊池寛」それは、彼が鹿ヶ谷の山荘で飲んだ如何なる美酒にも勝って居た。彼がその清冽な水を味って居る間は、清盛に対する怨みも、島に、ただ一人...
何となくわかってきました。「働く」ということが。 「働くということ」(黒井千次) 講談社現代新書 こうしていつの間にか、「労働」はぼくにとっての文学の主題となり、小説の出発点となった。あまりにも漠として捉え難い現代を掴む...
欧米のミステリを「翻案」の名の下に「日本仕様」へ 「電気」「広告」(黒岩涙香)(「黒岩涙香探偵小説選Ⅰ」)論創社 時は八月の中旬午後三四時と言えば暑き盛りなるべし。殊に昼の頃より天に蒲団のごとき雲広がりて風の道を塞ぎ、今...
いろいろな味わいが愉しめるビアスの「幽霊もの」 「シロップの壼」「壁の向こう」「ジョン・モートンソンの葬儀」「幼い放浪者」(ビアス/小川高義訳)(「アウルクリーク橋の出来事/豹の眼」) 光文社古典新訳文庫 サイラス・ディ...
会話によるバトル、恐ろしい小説です。 「ローマ熱」(ウォートン/大津栄一郎訳)(「20世紀アメリカ短篇選(上)」) 岩波文庫 「ローマ熱」(ウォートン/大津栄一郎訳)(「百年文庫050 都」)ポプラ社 高い崖の上につき出...
「私」が抱く「複雑な思い」こそ、味わいどころ 「動物学科空手道部2年高田トモ!」(片川優子)双葉文庫 二年生になったトモは、空手道部に新しく入部してきた一年生と接するうちに、不安に駆られる。後輩たちに追い越されたらどうし...
高校生探偵ボートルレの冒険と挫折 「奇岩城」(ルブラン/堀口大學訳) 新潮文庫 ルーベンスの油絵を盗もうとした窃盗団は、まんまと逃げおおせる。捜査にあたった予審判事は何も手がかりをつかむことができなかった。しかし、現場に...
漱石の初期短篇は、わかりません。 「倫敦塔・幻影の盾」(夏目漱石) 新潮文庫 倫敦塔を見物した事がある。その後再び行こうと思った日もあるが止めにした。人から誘われた事もあるが断った。一度で得た記憶を二返目に打壊わすのは惜...
すべて民衆の「空気」が引き寄せた「死」 「百年文庫047 群」ポプラ社 「象を射つ オーウェル」しかし、そのとき、わたしは振り向いて、わたしのあとからついて来た群衆を眺めた。それは二千人を下らない大群衆で、しかも、刻々に...
紙面から溢れ出ているヒッチコック愛 「ヒッチコック」(筈見有弘) 講談社現代新書 ヒッチコックの映画を深く読んでいくと、アイデンティティの追究、人間の内部における善と悪の葛藤、アモラルな視点、神の高見からの人間観察といっ...