「妖説血屋敷」(横溝正史)

短篇ながら、面白さと衝撃度が抜群です。

「妖説血屋敷」(横溝正史)
(「横溝正史ミステリ
  短篇コレクション④」)柏書房

「ミステリ短篇コレクション④」

「妖説血屋敷」(横溝正史)
(「誘蛾燈」)角川文庫

「誘蛾燈」角川文庫

菱川流家元に伝わる
「お染様の呪い」。そのお染様が
屋敷で目撃された夜、
家元・とらが刺殺される。
そしてその初七日の夜、
今度は家元を継いだ
お千が刺される。
お千は自らの血で
「血屋敷」と書き残し、息絶える。
果たして呪いは…。

短篇ながら、
面白さと衝撃度が抜群です。
横溝正史の初期作品には、
見逃せないものが数多くありますが、
本作品もそうしたものの一つです。

【主要登場人物】
「わたし」(お銀)
…語り手。
 八代目を継ぐ約束だったが、
 跡取りをお千に奪われる。
菱川とら
…菱川流家元。「わたし」の養母。
お千…内弟子。
鮎三…とらの甥。
お鶴…女中。
お染
…初代菱川とらの愛妾。
 虐待死したため、
 菱川家に祟るといわれる。
坂崎…弁護士。
鵜沢…事件を担当する警部。

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今日のオススメ!

本作品の読みどころ①
過去にさかのぼる因縁「お染様」

初代家元が、俳優と密通した
愛妾・お染を、片目をつぶし、
なぶり殺した末に
土蔵の壁に塗り込めた過去があり、
それ以来、
お染様伝説が伝わっているのです。
皿屋敷のお岩さんを凌ぐ
血屋敷のお染様が、
本作品のおどろおどろしさを
深めています。
家元が殺害されたとき、
暗闇の中を走り去るお染様が
目撃されているのですから
なおさらです。

本作品の読みどころ②
一人称から伝わる恐怖

「謎解き」という性格を考えたとき、
本作品のように
一人称で書かれた作品は、
ミステリとしては珍しい部類に
入ると思います。
語り手「私」は
家元の姪にあたる若い女性です。
家の中で自分の叔母と妹弟子が
殺されただけでも恐怖なのですが、
その二人を自分が恨んでいるため、
「自分が殺人者として
疑われる恐怖」も加わり、
それがあたかも直接体験のように
読み手に伝わってくるのです。

本作品の読みどころ③
見事な終末の大どんでん返し

最後の大どんでん返しが秀逸な作品です。
犯人と思われる人間が犯人ではなく、
絶対犯人ではないと思われた人間が
真犯人だった。
そしてお互いに
疑っていたと思われていた関係が、
実はお互いに愛し合い、
かばい合っていたという真相。
見事と言うしかありません。

それにしても、最初の事件の際、
外部からの侵入の形跡が
ないにもかかわらず、
家人の誰も拘束されないまま
第二の事件が起きる、
第二の事件が起きてから
ようやく家中や周辺の捜索を行い、
証拠物件の発見に至る、
指紋等の採取もしない等々、
現代の尺度では、
あまりにもずさんな初期捜査と
非難されるはずです。
こうしたミステリを創ることは、
もはや現代では困難に
なってきているのかもしれません。

「犬神家の一族」「八つ墓村」に似た
テイストのある横溝初期の傑作短篇、
いかがでしょうか。

(2018.12.2)

〔追記〕
こちらもご覧下さい。

墓村幽の味わえ!横溝正史ミステリー

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(2023.8.10)

柏書房
「横溝正史ミステリ短篇コレクション
 ④誘蛾燈」
収録作品一覧
妖説血屋敷
面(マスク)
身替り花婿
噴水のほとり

三十の顔を持った男
風見鶏の下で
音頭流行
ある戦死
誘蛾燈
広告面の女
一週間
薔薇王
湖畔
幽霊騎手
孔雀屏風
湖泥

adegeによるPixabayからの画像
おどろおどろしい世界への入り口

【関連記事:横溝ノンシリーズ作品】

【横溝正史ミステリ短篇コレクション】

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