「魚の李太白」(谷崎潤一郎)
むしろ、「文学的じゃれ合い」。 「魚の李太白」(谷崎潤一郎)(「潤一郎ラビリンスⅦ」)中公文庫 親友の春江から結婚祝いとして贈られた「緋ぢりめんの鯛」。着物の裏にするとよいという義母の言いつけにしたがって、桃子がそれを解...
むしろ、「文学的じゃれ合い」。 「魚の李太白」(谷崎潤一郎)(「潤一郎ラビリンスⅦ」)中公文庫 親友の春江から結婚祝いとして贈られた「緋ぢりめんの鯛」。着物の裏にするとよいという義母の言いつけにしたがって、桃子がそれを解...
悪人の存在しない作品世界の温かさ 「津の国人」(室生犀星)(「百年文庫024 川」)ポプラ社 夫は津の川を東へ上り、念願の宮仕えのために京都へ向かう。妻・筒井はそれを西へ下り、官人の家の奉公へと向かう。再び一緒に暮らせる...
「純文学」と「大衆文学」を隔てる壁 「街とその不確かな壁」(村上春樹) 新潮社 ホルヘ・ルイス・ボルヘスが言ったように、一人の作家が一生のうちに真摯に語ることができる物語は、基本的に数が限られている。我々は、その限られた...
読み手もまた「街」と「現実世界」の間を浮遊する 「街とその不確かな壁」(村上春樹) 新潮社 きみがぼくにその街を教えてくれた。その夏の夕方、ぼくらは甘い草の匂いを嗅ぎながら、川を上流へと遡っていった。銀色の魚たちを眺めた...
ホームズも、シリーズ自体も、まさに「生還」 「空き家の冒険」(ドイル/日暮雅通訳)(「シャーロック・ホームズの生還」) 光文社文庫 アデア卿が変死体で見つかった殺人事件は、ロンドン中を騒がせていた。頭を銃で撃ち抜かれてい...
三重吉作品にしばしば登場する「お姉さん」 「おみつさん」(鈴木三重吉)(「千鳥」)岩波文庫 「丁さん」と、誰だか、白粉を附けた若いをばさんが、塵取を提げて出て来る。「丁さんでがんせうがの。まあまあすつかり見違へた。こつち...
「死」と「生」「性」が痛々しいまでに対比され 「生物祭」(伊藤整)(「百年文庫069 水」)ポプラ社 「生物祭」(伊藤整)(「日本近代短編小説選 昭和編1」) 岩波文庫 それは北国の春であった。父の病気をとり巻いて私を育...
経済戦争の焼け野原が広がっている現代に 「太平洋戦争 日本の敗因1」(NHK取材班編)角川ソフィア文庫 日本や日本人が戦前と少しも変わっていない部分。それを、五〇年前の太平洋戦争のいくつかの戦局を抜き取り分析することによ...
その正体は分厚い「暗喩」のヴェールに隠されている 「天使の蝶」(レーヴィ/関口英子訳)(「天使の蝶」)光文社古典新訳文庫 「なんの動物の骨だね?」とフランス人が尋ねると、「わからん」とイギリス人が応じた。「こんな骨は見た...
味わうべきは作家たちの夢の共演 「五階の窓」(江戸川乱歩・他)(江戸川乱歩・平林初之輔・森下雨村・ 甲賀三郎・国枝史郎・小酒井不木)(「合作探偵小説コレクション①」) 春陽堂書店 「五階の窓(第一回)」(江戸川乱歩)(「...