「八月の路上に捨てる」(伊藤たかみ)
夢に敗れ、現実にも破れた若者の悲哀 「八月の路上に捨てる」(伊藤たかみ)(「八月の路上に捨てる」)文春文庫 明日の30歳の誕生に離婚する敦は、今日で職場を去る女性ドライバー・水城にその顛末を語る。水城もまた離婚経験者だっ...
夢に敗れ、現実にも破れた若者の悲哀 「八月の路上に捨てる」(伊藤たかみ)(「八月の路上に捨てる」)文春文庫 明日の30歳の誕生に離婚する敦は、今日で職場を去る女性ドライバー・水城にその顛末を語る。水城もまた離婚経験者だっ...
昭和の香りをふんだんに湛えて甦った作品 「あの道この道」(吉屋信子) 文春文庫 白百合を抱えていたしのぶは、自動車の運転手から声をかけられる。お嬢様がそれを欲しているから渡せというのだ。車に乗っていたのは、村にある別荘の...
その生き方もまた孤独であり哀感が漂う 「海へ」(桜木紫乃)(「日本文学100年の名作第10巻」) 新潮文庫 一緒に暮らしている健次郎に「金が必要」だと千鶴は持ちかけられる。フリーのジャーナリストとしての仕事が入ったのだと...
真に恐れるべきはロボットではなく、人間 「R62号の発明」(安部公房)(「R62号の発明・鉛の卵」)新潮文庫 会社を馘になり、自殺しようとしていた機械技師「彼」は、生きたままロボットにされ、「R62号」と呼ばれる。「彼」...
原形版と改訂版の両方を読み比べてみませんか 「青蜥蜴」(横溝正史)(「金田一耕助の新冒険」)光文社文庫 ホテルで殺害された娼婦の胸にはマジック・インキで描かれた一匹の青蜥蜴が。犯人と目される連れの男は、全身黒ずくめの猫の...
都会ならではの闇が描かれた作品 「夜の黒豹」(横溝正史)角川文庫 ホテルで殺害された娼婦の胸にはマジック・インキで描かれた一匹の青蜥蜴が。犯人と目される連れの男は、全身黒ずくめの猫のような男だった。次には十五歳の少女が同...
勝つことは難しいが、負けることはない 「サアカスの馬」(安岡章太郎)(「教科書名短篇少年時代」)中公文庫 「僕」はまったく取り柄もやる気もない生徒だった。今日も授業の最中、立たされた廊下から見えるサアカス団の痩せこけた馬...
読み手の理解を激しく拒絶する逸品 「マダム・エドワルダ」(バタイユ/中条省平訳)(「マダム・エドワルダ/目玉の話」) 光文社古典新訳文庫 見ぶるいするほどの美しい娼婦マダム・エドワルダを、「私」は選んだ。男と女がひしめき...
つまりは戦意高揚のためのイリュージョン 「武侠艦隊」(押川春浪)(「日本児童文学大系3」)ほるぷ出版 密命を受けた前原少尉と春枝夫人の二人は、人外境の秘地へと辿り着く。しかしそこには露西亜軍事探偵の一味8人がアジトを造っ...
エピソードを繋ぐ横糸が作品の魅力を高めている 「ビブリア古書堂の事件手帖2」(三上延)メディアワークス文庫 ビブリア古書堂でもう一度働くことにした「俺」のもとに、奈緒が相談を持ち込む。奈緒はかつて古書が絡むトラブルによっ...