「蟲」(江戸川乱歩)
あまり味わいたくはない種類のものですが。 「蟲」(江戸川乱歩)(「江戸川乱歩全集第5巻」)光文社文庫 厭人病者の柾木は、友人・池内に人気女優・木下芙蓉を紹介されるが、彼女は初恋相手・文子だった。自らの想いを伝えようとする...
あまり味わいたくはない種類のものですが。 「蟲」(江戸川乱歩)(「江戸川乱歩全集第5巻」)光文社文庫 厭人病者の柾木は、友人・池内に人気女優・木下芙蓉を紹介されるが、彼女は初恋相手・文子だった。自らの想いを伝えようとする...
人間の存在の根幹に深く思いを巡らせるべき 「動物」(武田泰淳)(「百年文庫045 地」)ポプラ社 ナラ、カシ、クワ、コクワ、アケビ、ヤマブドウ、木の実の類がほとんど全滅です。食料欠乏に困り抜いた動物たちは、危険を冒して村...
私たちの心をも明るく照らしはじめる 「とわの庭」(小川糸)新潮文庫 裸足のまま勝手口の前に立つ。チェーンを外し、ゆっくりとドアノブを左に回して扉を開ける。大丈夫。きっとこれからも、大丈夫だ。わたしはゴミの要塞をかき分けな...
どこまでもクール、リアル、ニヒル 「俊寛」(芥川龍之介)(「芥川龍之介全集4」)ちくま文庫 「俊寛」(芥川龍之介)(「羅生門・鼻」)新潮文庫 俊寛様の話ですか?俊寛様の話くらい世間に間違って伝えられた事は、まずほかにはあ...
安部の思考の行く先を想像する愉しみ 「飛ぶ男」「さまざまな父」(安部公房)(「飛ぶ男」)新潮文庫 ある夏の朝、たぶん四時五分ごろ、氷雨本町二丁目四番地の上空を人間そっくりの物体が南西方向に滑走していった。月明かりを背にし...
金田一耕助の事件簿072 ようやく始まり唐突に終わる殺人事件 「日時計の中の女」(横溝正史)(「七つの仮面」)角川文庫 あの日時計殺人事件の犯人はほかにある。庭の日時計から遺体が発見された家屋の持ち主の妻は、過去の事件の...
「錯覚」が支配する物語世界と現実 「錯覚屋繁盛記」(半村良)(「夢の底から来た男」)角川文庫 「錯覚屋繁盛記」(半村良)(「暴走する正義」)ちくま文庫 自分一人がこの世の屑と、劣等感を噛みしめていた木下は、ある日、自分に...
日常を切り取り、コラージュのように 「日本三文オペラ」(武田麟太郎)(「百年文庫047 群」)ポプラ社 アパートと云っても――いや、そんな何となく小綺麗で、設備のよくととのつた西洋くさい貸部屋を意味する言葉を使ってはいけ...
人形佐七捕物帳017 四つの証拠が四人の別の人物を指し示す 「名月一夜狂言」(横溝正史)(「名月一夜狂言」)創元推理文庫 「名月一夜狂言」(横溝正史)(「完本 人形佐七捕物帳一」) 春陽堂書店 「名月一夜狂言」(横溝正史...
まるで暗号を読み解くかのような 「千鳥」(鈴木三重吉)岩波文庫 夏に避暑に訪れて以来、二度目となるある小さな島へやってきた「自分」。逗留先の小母さんの家に上がると、夏にはいなかった少女・お藤さんがいた。彼女とは以前からの...