「マシアス・ギリの失脚」(池澤夏樹)
何かが「崩れ去った」のではなく 「マシアス・ギリの失脚」(池澤夏樹) 新潮文庫 朝から話をはじめよう。すべてよき物語は朝の薄明の中から出現するものだから。午前五時三十分。空はまだ暗いのに、鳥たちが巣を出て騒ぎだす。東の空...
何かが「崩れ去った」のではなく 「マシアス・ギリの失脚」(池澤夏樹) 新潮文庫 朝から話をはじめよう。すべてよき物語は朝の薄明の中から出現するものだから。午前五時三十分。空はまだ暗いのに、鳥たちが巣を出て騒ぎだす。東の空...
人間の深層心理の複雑さを描いた作品か? 「新月」(木々高太郎)(「百年文庫029 湖」)ポプラ社 細田氏の言うたことが、少しも判らなかった。それは、一種の殺人の告白である。細田氏のように、人生を活きて来た人には私の判らぬ...
シニアは社会にとって必須の存在 「なぜヒトだけが老いるのか」(小林武彦)講談社現代新書 「老い」とはいったい何なのでしょうか?人にとって老いは必要なものなのです。もっと言うと、老いを実感しているシニアは社会にとって必須の...
両者ともどことなくギクシャクした感じ 「江戸川乱歩全集第4巻 孤島の鬼」(江戸川乱歩)光文社文庫 「孤島の鬼」「私」が愛した女性・初代は、ある夜、しっかりと戸締まりがなされた自宅で、何者かに心臓を刺されて殺された。「私」...
「大衆文学」としての小説の在り方をギリギリまで追究 「潤一郎ラビリンスⅦ」(谷崎潤一郎) 中公文庫 「病蓐の幻想」神経衰弱に取り憑かれて病床に伏している「彼」は、虫歯も患い、その激痛のあまり、精神が変調を来す。さらには今...
「分からない」そして「何かに変身している」こと 「壁」(安部公房)新潮文庫 その瞬間、ぼくはもう一人のぼくの正態を見破ってしまったのです。それはぼくの名刺でした。そう思ってみれば、それはどう見ても見まがうことのない名刺で...
金田一耕助の事件簿062 香水の謎は?果たして本当に心中か? 「香水心中」(横溝正史)(「殺人鬼」)角川文庫 大手化粧品会社社長・常盤松代から依頼を受けた金田一は、休暇中の等々力警部を連れ、彼女の別荘のある軽井沢へ向かっ...
で、例によって、よく分かりません。 「文字禍」(中島敦)(「中島敦全集1」)ちくま文庫 国王から文字の霊の研究を命じられた老博士は、図書館で膨大な文献を解読する作業を行う。一つの文字を長く見つめているうちに、文字がバラバ...
汚職やそれをつくりだす権力構造 「泥芝居」(杉浦明平)(「百年文庫083 村」)ポプラ社 太郎さが死んで間もなく、息子の次郎さの名前が耳に入ってくるようになった。次郎さが漁業協同組合の理事になったげな。土地改良組合の理事...